Research Abstract |
本年度,本研究では制御系における通信容量およびシステムの複雑度に関する次の点についての結果を得た. パケット落ちのあるネットワークド制御における最適量子化器 ネットワークド制御においては信号伝達における情報量を有限に抑えるため,伝達信号の量子化が不可欠となる.特に安定性を保ちながら通信容量を最も小さくするためには,そのための最適量子化器を求める必要がある.従来,通信線がエラーを起こさないという仮定のもとで,そのような最適量子化器が与えられていた.一方,汎用のネットワークを信号伝達に利用する場合,送受信する信号のパケットが必ずしも望みのタイミングで送信されない,パケット落ちという現象がおきることを前提としなければならない.従来,ある確率のもとでパケット落ちがすると仮定し,その場合の確率的安定化が可能なパケット落ち確率の上限が知られていた.ところが実際のネットワークド制御においては,量子化とパケット落ちが同時におきることが自然である.これを踏まえて本研究では,その場合の,安定化可能なための最適量子化器とパケット落ち確率の上限の関係について,解析的に明らかにした.本研究の結果は,従来独立に知られていた上記2っの結果を一つに統合するものである. メモリ容量制限下におけるシステムの近似と安定化 近年,コンピュータネットワークの発達に伴い,これを制御系の信号伝達に用いるというネットワークド制御に関する研究が盛んである.特に信号伝達のデータレートに制約のある制御問題が注目を集めている.そこでは信号伝達においてデータ圧縮を行い,データ量の軽減を実現するが,その場合の符号化に伴う計算:量増大についての議論が伴っていない.そこで本研究では,符号化や制御器といったサブシステムの計算量の大きさを測る一っの指標として,動的システムのメモリ,つまり状態変数を量子化し,その場合の数を用いることを考える.このような動的システムを,ビットメモリシステムと呼び,ビットメモリのビット長に制約のある制御問題,具体的には近似問題と安定化問題を考える.本年度は,近似問題においては,与えられた近似誤差を達成するのに必要なビットメモリ長の下限と上限について,近似されるシステムの極などを用いて解析的に与えることができた.また安定化問題においては,安定化を達成するのに必要な制御器のビットメモリ長の上限について,同様にプラントの極などを用いて具体的に与えることができた.本研究の結果は,メモリ容量の限られている組み込み制御に応用することも可能である.
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