Research Abstract |
近年の礫床河川では,低水路河床低下とみお筋の固定化,細粒河床材料の堆積と高水敷化,横断面内比高差の拡大,河道内樹林化と言った特徴から,その河相変質が顕著である.本研究は,利根川水系渡良瀬川礫床区間を調査対象として,河相変質とハリエンジュによる河道内樹林化を考察した.とくに,最近の洪水に注目し,洪水による物理基盤の攪乱と植生動態を調べた.対象地点では,平成11年に,河川水辺の国勢調査(植物)が行われ,これを植生のベースマップとして横断面内植生分布と比高,河床材料の関係を求め,その後に生じた洪水攪乱や人為的管理(樹木の伐採)による植生分布と河原環境の変遷を求めた.洪水攪乱については,横断面内植生分布と移動限界礫径分布に注目し洪水撹乱規模を評価した.これらから,表層河床材料の80%以上が移動限界を超える洪水撹乱が生じても河原が維持される場合と,外来草本(シナダレスズメガヤ)がパイオニア植生として侵入し,河原が次第に植生化する過程を見出している. 交互砂州に特徴づけられた礫床河川では,しばしば見られる落差のある瀬とその下流の緩やかな縦断勾配をもつ淵からなる河道ユニットが代表的な景観であるが,落差の大きな瀬がさらに顕著化することによって低水路と州との比高差が増し,州上の植生繁茂,河道内樹林化を産む下地となって,礫床河川の河相変化が生まれる.こうした最近の河道特性は,交互砂州支配となる大規模出水よりも,むしろ,近年何回か経験する中規模クラスの洪水によって特徴づけられると考え,その形成過程を水理実験,河床変動計算から考察した. さらに,大規模出水時では,河道内樹林地による流木群の捕捉が治水上の障害になる可能性がある.本研究では,個別要素法を用いた流木群のラグランジュ的追跡に関する数値計算手法を構築し,これにより樹林地による上流端での流木捕捉.水位上昇を評価する手法を提案した。
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