Research Abstract |
大和川流域の代表地点である藤井のBOD,アンモニウム態窒素濃度の時系列変化は,2月をピークに冬に濃度が増加し,他の時期は低下する傾向がみられた,しかし,塩素イオンや硝酸態窒素濃度にはそのような季節変化のような規則的な変化が認められなかった,濃度と流量,水温との関係により,BOD,アンモニウム態窒素濃度は水温変化に依存し,塩素イオン濃度は流量に依存するとわかった.また,硝酸態窒素濃度は流量,水温ともに依存しないことが分かった.河川水の濃度変化に影響するものとして,流量(雨水による流量増加と希釈効果),水温(生物による活性)が考えられる. BOD/Cl比は夏に低く冬に増加する傾向が見られた.塩素イオンと有機物はともに生活排水起源と考えられ,塩素イオンと有機物の比が季節により変化するとは考えにくい,そこで,小型合併浄化槽の影響かもしくは河川での分解の影響であることが推測された,有機物の分解と同様に,河川内で硝酸態窒素に影響を与える現象として,光合成が考えられた,そこで,pHと水温,DO(溶存酸素濃度)の関係に着目した.光合成が起こると,硝酸が消費されpHは上昇し,酸素が発生するので,DOは大きくなる.大和川の河川水は25℃以上で,DOは飽和濃度よりも高く,pH8以上を示した.硝酸態窒素濃度が変化する原因として,河川での分解,光合成が挙げられた,そこで,この硝酸態窒素濃度の河川での変化がどこで起こっているのか解明するために硝酸態窒素の窒素同位体による解析を行った.この結果,硝酸態窒素濃度の窒素同位体は夏と冬を比較すると,冬にはどの地点も窒素同位体は変化しないが,夏に大きく変化した,その中で,水深が深く植物が生育しない環境では窒素同位体が変化せず,硝酸態窒素も変化しない,一方,植物が生育する場所では窒素同位体が大きく変化し,硝酸態窒素濃度が減少する,このことから,夏に硝酸態窒素濃度は植物による光合成により減少することがわかる.これらの結果から,夏には温度が高く生物活性が高いため,有機物分解,硝化が速く反応し,BOD,アンモニウム態窒素濃度は低くなる.また,硝酸は光合成により消費され,河川水中の濃度は減少する,しかし,冬には有機物分解,硝化が遅く,光合成反応があまり活発に起こらないため,河川水中でのBOD,アンモニア,硝酸態窒素が低くならないと考えられた. したがって,有機物濃度が高い排水が流入しても,夏には深刻な問題とならないが,冬には河川の自浄能力が低く,水質悪化を引き起こす,このため,冬には河川が汚染されないような十分な水質を満たした上で,河川に排水しなければ,水質が改善されないと考えられる,特に冬にアンモニウム態窒素濃度が検出された奈良県の流域南部で浄化施設などの対策をすることにより,水質改善の効果が大きいと考えられる.
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