Research Abstract |
近年,台風上陸数の増加や,突発性気象現象の頻発による自然災害が増加している。建築物の安全性を確保する上では,強風に対する安全の確保が重要である。本研究では,特に,強風災害発生の特徴を考慮することにより,建物内外圧の影響を考慮する点が特徴的である。強風災害に関する直接的な現地調査および建築物を対象とした風洞実験,数理モデルによる解析の三位一体の研究姿勢を維持している。 強風災害調査では,平成14年度に発生した台風,竜巻,ダウンバーストに対し精力的な現地調査を実施した。具体的には,6月27日佐賀市竜巻被害,6月29日栃木突風被害,9月8日静岡県富士市突風10月22日北海道門別町厚賀竜巻,12月5日前線による強風東京,台風06号滋賀県近江八幡市新幹線架線被害,台風16号Spring8被害,台風18号広島,北海道被害,台風21号愛知豊橋突風,台風22号伊東市宇佐美被害と10件以上に上る。 風洞実験による建物に作用する風圧力の調査では,特に強風時に被害の多い屋根部に関する詳細なデータを取得した。これらのデータを解析し,屋根部に作用する風圧力の分布を明らかにした。また,より詳細な資料を得るため,512点の物理量を同時に計測可能なデータ収集装置を開発し,300チャンネル以上の風圧力センサをあわせて用いることにより,風圧力の詳細なデータを得られる環境を整備した。 建物室内圧の影響は,外圧の影響と共に強風被害では無視し得ない可能性がある。このため,建物室内圧に関する数理モデルを構築した。数理モデルの妥当性の検証として,風洞実験による建物モデルの内圧の周波数特性と,数理モデルによる予測値の比較を行い,両者の対応を確認した。数理モデルの適用に当たっては,過去の強風災害事例を参考に,大きな開口部が大空間に存在する場合の被害が顕著である傾向を,構築した数理モデルから明らかにした。
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