Research Abstract |
近年,台風上陸数の増加や,突発性気象現象の頻発による自然災害が増加している。建築物の安全性を確保する上では,強風に対する安全の確保が重要である。本研究では,特に,強風災害発生の特徴を考慮することにより,建物内外圧の影響を考慮する点が特徴的である。強風災害に関する直接的な現地調査および建築物を対象とした風洞実験,数理モデルによる解析の三位一体の研究姿勢を維持している。 強風災害調査では,平成16年度に比べると台風自体の上陸数が少なかったため,調査件数は少ないものとなった。これまで強風は夏から秋にかけての台風が主要因と考えられている。しかしながら,冬季に日本海側の低気圧性前線に伴い発生する突風は,11月8日,12月25日,26日に秋田県,山形県で大きな被害をもたらした。これらの突風により山形県では羽越線脱線事故が発生した。現地調査を実施し,この脱線事故が,極めて局地的に発生する突風によるものであることをつきとめ,日本風工学会による緊急報告会でその調査結果を公表し,突風に対する注意と,災害抑制のための調査研究の必要性をアピールした。また,米国でハリケーンカトリーナが発生し大きな被害をもたらした。この際,避難所であるスーパードームが被害を受け,十分な機能を果たさなかったことが問題となっている。この事故は建物の内圧の影響が無視できない大空間構造物の風に対する脆弱性の一つの例であり,本研究が目指す建築物内外圧の影響考慮の重要性を示している。 建物室内圧の影響については,建物室内圧に関する数理モデルを構築した。数理モデルを用いて,複数の室内が連結されたモデルの内圧の計算をおこない,突風により風上に大きな開口が突然発生する場合の非定常な内圧の様子が再現された。
|