2004 Fiscal Year Annual Research Report
多成分連成系の熱・物質の複合移動現象と建築環境解析に関する研究
Project/Area Number |
16560527
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
尾崎 明仁 北九州市立大学, 国際環境工学部, 助教授 (90221853)
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Keywords | 建築環境 / 建築物理 / 熱・物質複合移動 / 多成分系 / 非平衡熱力学 / 熱力学ポテンシャル |
Research Abstract |
本研究は,熱と物質の複合移動に関する多成分連成系の数理モデルを構築すること,それを建築の熱・物質移動現象の解明に応用すること(熱移動と物質移動を連成させた室内環境の解析ツールを開発すること)を目的としている。 平成16年度は,物質平衡の指標(駆動力)として外力・内力の影響を考慮した熱力学ポテンシャルを定義し,物理吸着と化学吸着をともなう多成分連成系の熱・物質複合移動方程式を導出した。すなわち,熱と物質の移動を非平衡熱力学を基にポテンシャル系(同次元の熱エネルギー系)として統一的に理論体系化した。 次に,提案した数理モデルを使用して,建築の熱と水分と空気の連成シミュレーションソフトTHERB for HAMを開発した。汎用的な熱負荷計算ソフトでは無視することの多い壁体の吸放湿(熱・水分移動)が,室内湿度変動および顕熱・潜熱負荷に及ぼす影響について検討した。その結果,(1)THERBは室内および壁体の温湿度を精度よく予測できること,(2)吸放湿を考慮することにより室内湿度変動は緩慢になること,(3)吸放湿を無視する従来の簡易計算は室内湿度および潜熱負荷の誤差が大きいこと,(4)内装材の水分容量の多い壁体仕様(例えば珪藻土仕上げ)は調湿作用により冬季暖房時の過乾燥を緩和できること,などを明らかにした。 さらに,THERBを床下の環境解析に適用し,換気孔工法,基礎パッキン工法,基礎断熱工法において自然換気あるいは強制換気した場合の温湿度の違いについて比較した。その結果,(5)換気孔工法,基礎パッキン工法はいずれも自然換気では夏季の床下湿度が高く,特に基礎パッキン工法は中央部付近から風下側が高湿になること,(6)強制換気するとこれらの工法でも床下湿度を概ね80%以下に低下できること,(7)基礎断熱工法は竣工後数ヶ月に亘り高湿環境となるため,初期湿度の低下には換気回数3回/h程度を要すること,などを明らかにした。
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Research Products
(6 results)