2006 Fiscal Year Annual Research Report
大正・昭和初期の文化住宅における室内通風環境及び採光環境に関する研究
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16560531
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
大西 一也 大妻女子大学, 家政学部, 助教授 (30310593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀越 哲美 名古屋工業大学, 大学院・産業戦略工学専攻, 教授 (80144210)
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Keywords | 文化住宅 / 昭和戦前期 / 通風環境 / 採光環境 / 平面 / 断面 |
Research Abstract |
「朝日住宅図案集」(昭和4年)掲載の住宅プラン85戸を分析対象として、平面図、立面図、断面図などの資料から、日照到達距離、南壁面の方位角などを抽出し、概ねの採光の様相を分析した。 (1)対象住宅の軒の出の平均値は0.58mで、軒先高の平均値は3.47mである。また、軒先から窓上の角度(保護角1)の平均値は49.31゜で、最大値90゜(軒一窓上端が0.Om)が27.1%、最小値0゜(軒の出0.0m)が17.6%となっている。その間は幅広く平均的に分布しており、軒の出をしっかり考慮している住宅と、軒のない住宅がみられる。南壁面の方位角の平均値は-0.36゜で、0゜(真南)の住宅は40.0%を占めている。 (2)採光環境を表す簡易指標として日照到達距離を定義し、夏至(6/21)、冬至(12/21)、春分・秋分(3/21、9/23)、年間最高気温日(7/22)の9時から16時までの各6時間帯の日照到達距離の経時変化を算出した。日照到達距離は、夏季において0.37m以内と日射遮蔽を考慮している様子が窺えるが、標準偏差がO.4m前後と比較的高く、住宅によって差がみられる。冬季においては2.Omとなり、日照確保が考えられており、標準偏差は0.5m前後である。春秋季は1.15m前後となり、標準偏差は0.6m前後と高い。 (3)日照到達距離の経時変化から得られたデータ28項目を観測変量として、階層クラスター--分析を行い、日照の類型を5住戸グループに分類した。 (4)軒の出については、日照調整に関して最も有効であると考えられるGroup Dの平均値が0.8mであり、0.9mになると過剰になり、冬季における日照確保に対して不利となる。軒先高については、平均値が3.47mであり、Group Dの平均値(3.14m)と近似した値となっており、平均値よりも高い住戸グループは夏季に日射が入り過ぎ、低い住戸グループは冬季に日照確保の妨げとなる。 (5)保護角1(軒先一窓上端)が大きくなるにつれて、日照到達距離は短くなる。Group Dの平均値62.44゜あたりが、夏季の日射遮蔽、冬季の日照確保における最適値と考えられる。 (6)南壁面の方位角をみると、南壁面が東に傾斜している(Group C)ほど、日照到達距離は午前中に高く、気温が上昇する午後に低くなり、「東への壁面傾斜」が、日射制御の上で有利であると考えられる。 (7)大正から昭和戦前期にかけて、住宅の外観意匠の洋風化が進み、軒や庇の形状が短くなる傾向にあったが、本対象事例では夏季の日射遮蔽と冬季の日照確保に適応させるよう、居間の採光環境を確保するための工夫が見られた。平成16-17年度に行った昭和戦前期の中小住宅の通風環境に関する研究結果とともに研究成果報告書をまとめた。
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