2006 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀イギリス風景庭園における自然的景観の形成と自然美の観念
Project/Area Number |
16560567
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
田路 貴浩 明治大学, 理工学部, 助教授 (50287885)
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Keywords | イギリス / 18世紀 / 庭園 / 風景 / ウエイトリ |
Research Abstract |
本年度は現地調査と文献調査を行い、18世紀イギリス風景庭園における自然的風景美の理論の解明を試みた。 現地調査は、とくにランスロット・ブラウンによるサイオン。ハウス(Syon House)の庭園、ホン・チャールズ・ハミルトン(Hon Charles Hamilton)によるパインズヒル(Painshi11)の二つの庭園について行った。現地を踏査し現状を把握したうえ、造園当時との異同を確認した。 文献調査については、とくにトーマス・ウエイトリ(Thomas Whately/?〜1772年)の庭園デザイン論『現代造園論』(Observation on Modern Gardening,1770)に注目し、全訳を行ったうえで内容を検討した。イギリスでは18世紀中頃、ランスロット・ブラウンによって風景庭園が多数造営されたが、ブラウンはそのデザイン理論を著すことはなかった。そのため、ウエイトリのこの著作は、ブラウン風庭園に関するもっともまとまった理論書として評価され、当時多大な影響を及ぼした。本書の中で、ウエイトリはとくに風景の「性格」を庭園デザインの最重要原理とし、あらゆる庭園要素はそれぞれの風景における支配的な性格に適合するよう、形状や配置を決定すべきであると再三論じている。興味深いのは、「性格」は直感的な印象であり、かつ美、偉大、簡素といった観念として捉えられている点である。この「性格」という概念について理解を深めるため、古典主義詩論の流れ(ボアロー、デュボス、ドライデン)、イギリス経験論(ロック、ヒューム)、同時代の庭園論(シェンストン、メイスン、ケイムズ)についても調査を行った。その結果、ウエイトリの風景観は古典主義詩論にイギリス経験論の知見を導入したものであり、ロマン主義的風景観の先駆け(ハント)というより、より古典主義的と評価すべきことが明らかになった。
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Research Products
(2 results)