2006 Fiscal Year Annual Research Report
住宅系伝統的建造物の保存修復と居住環境整備手法の研究
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16560573
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
島田 敏男 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 遺構研究室長 (60187432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 真一 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 教授 (70359446)
金井 健 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (90359448)
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Keywords | 伝統的建造物 / 伝統的建造物群保存地区 / 街並環境整備 / 民家再生 / 修理 / 修景 / 改造 |
Research Abstract |
1.伝統的建造物の保存にかかる理念・制度に関する検討 伝統的建造部物を扱う制度は、文化財の枠組みとしては、文化財保護法によるもの、文化財保護法にもとついた条例によるものがある。その他にも、近年各地でおこなわれている歴史的な景観を活かしたまちづくりのなかで、景観行政のなかで取り扱われるものや、景観整備事業のなかで取り扱われるものがある。それぞれの制度や事業ごとに、「何は保存し、何が改変可能か」を整理した。 2.住民の意識調査 今年度では4カ所で調査をおこなった。10年近く伝統的建造物群地区として事業をおこなってきた町家形式の家屋が並ぶ恵那市岩村町では修理事業ですでに改造をおこなった事例に住む方と、これから修理によって改造を希望さている方の双方から意見を聴取できた。昨年伝統的建造物群保存地区となりこれから保存事業が行われる地区として、町家が並ぶ佐賀県鹿島市浜宿と武家屋敷町である長崎県国見町神代小路で調査をおこない、異なる二つのタイプの家屋形式について、それぞれ将来への希望を聴取することができた。また、長崎県平戸市では、文化財という枠組み以外で、景観条例を制定して町街環境整備事業を活用して町並を保存している地区、ここでは住民の方々の住まいに対する意見を聴取するとともに、文化財として修理との違いを把握することができた。 3.修理・改造事例の収集と、修理・改造の経緯の検討 上記意識調査をおこなったなかで、意識調査とともに、修理・改造の実態を把握し、同時にそのような改造に至った経緯について調査した。 4.文化財以外の伝統的建造物を利用した住宅の事例収集 昨年度に引き続き、雑誌等の公刊図書のなかから、伝統的建造物を住宅として使用しつづけるための改造をおこなった事例について、掲載されたものについては図面・写真等をデータ化した。そのデータを並べてみると、いわゆる再生民家については、何を保存するかが、設計者もしくは施主の考えで、かなり幅があることが明らかとなった。 5.報告書の作成 以上3年間の研究成果を受けて、(1)伝統的建造物保存の施策とシステム、(2)伝統的建造物の居住者意識と居住のための工夫(住民の意識と改造例)、(3)公刊物にみられる事例集、(4)伝統的建造物に住み続けるために考えるべきこと、以上4つの視点から報告書を纏めた。
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