2005 Fiscal Year Annual Research Report
ローレンツ電子顕微鏡法によるナノ磁性粒子内部の磁区構造決定
Project/Area Number |
16560576
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹田 真帆人 横浜国立大学, 工学研究院, 助教授 (30188198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣井 善二 東京大学, 物性研究所, 教授 (30192719)
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Keywords | Cu-Co合金 / ローレンツ顕微鏡法 / ナノ磁性粒子 / 磁区構造 |
Research Abstract |
近年、情報記録担体として磁性微粒子の挙動や制御がきわめて重要な研究課題になっている。従来の磁性微粒子研究は物性面からのアプローチが多く、組織と物性との対応関係に関する詳細な検討は必ずしも十分でない。磁性微粒子にとっては組織や組成の均一性が性質を大きく変えることが認識されつつある。本研究は固相相変態を利用して、銅中に磁性微粒子を分散させ、組織と物性を電子顕微鏡レベルで調べようとしたものである。電子顕微鏡法の一種であるローレンツ顕微鏡を用いると、磁化測定では得られない個々の粒子の磁区構造や磁化に関する情報を取得できる。本研究では磁性体全体が持つ磁性と個別の磁性粒子が持つ磁化との兼ね合いを電子顕微鏡とSQUID、VSM測定により明らかすることを目標とした。本研究では、銅中のコバルト微粒子、鉄微粒子、鉄-コバルト微粒子を作製し、SQUID、VSM測定などによる物性評価とローレンツ法を含む電子顕微鏡法を適用して以下の知見を新たに得た。 (1)ローレンツ電子顕微鏡法及び明視野電子顕微鏡法 ナノサイズの磁性微粒子にローレンツ電子顕微鏡法を適用し、磁性体粒子による極めて鮮明な電子線偏倚を得た。この結果を理論計算値と照合したところ、実験値は計算値の約2倍の大きさを持つことが分かった。この計算値は磁性体内部でのみローレンツ力が作用するという仮定のもとに算出されていることを考えると、実測値が大きめに出ることは説明できる。またローレンツ電子顕微鏡法では磁化の大きさと共に磁性微粒子の磁区構造と磁化方向の分布を調べることが可能であることが確認された。このことは今後ローレンツ電子顕微鏡法が積極的に磁性微粒子研究に適用され、実験的な研究の可能性が大きく広がることを示唆している。 (2)SQUID測定及びVSM測定 磁性体が実際に利用されるのは磁性材料全体の性質により、またそれは個別特性の総和にならない。粒子間相互作用などが磁性微粒子では特に重要である。この点を考えて、磁性微粒子のサイズや分散状況を系統的に変えて磁化測定を行った。幾つかの重要な知見が得られている。Cu-Fe合金の磁性粒子分布を変えていくとM-H曲線にメタ磁性的な変化が見られることが分かった。一連の測定により電子顕微鏡による組織とかなり緊密な対応関係を持つことが分かったが、特に保持力と飽和磁化に関しては磁性元素の組成依存性も大きい。組織学的にも磁性微粒子の双対化発言などで磁化がはっきり変化していることが確認された。鉄微粒子はこれまでも構造相転移やマルテンサイト変態等との関係が問題になっており、今後更に詳細な研究を行う基盤としても重要な到達点と考えられる。
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Research Products
(1 results)