Research Abstract |
前年度の研究において評価を行った擬一次元結晶構造を有するコバルト含有酸化物Ca_3Co_2O_6の熱電変換特性の向上を目的として,Ca_3Co_2O_6にドーピングを施した(Ca, Bi)_3(Co, M)_2O_6単結晶(M=Fe, Cu)をフラックス法により作製し,室温から約800℃における電気抵抗率,および,ゼーベック係数測定と出力因子(ゼーベック係数の2乗/電気抵抗率)評価を行った.(Ca,Bi)_3(Co,M)_2O_6単結晶(M=Fe,Cu)はモル比20:3.5:1に秤量した無水K_2CO_3(フラックス剤),CaCO_3/Bi_2O_3,および,Co_3O_4/Fe_2O_3,またはCo_3O_4/Cu_2O混合粉末をアルミナルツボに入れ,空気中で室温から880〜970℃まで100Kh^<-1>の速度で昇温,10〜48h保持,577℃まで-5〜-200Kh^<-1>の速度で降温し,電気炉内で室温まで冷却することにより得られた.ドーパント(Bi,Fe,Ni,Cu)の量にも依存するが,良質な長さ3mm以上の針状単結晶は920〜940℃で保持した実験で得られた.得られた針状結晶は黒色であり,長い六方柱状または三角柱状の形態を呈していた.サイズは最大で長さ10mm程度,幅1mm程度であった.得られた結晶の破断面についてEPMAによる分析を行った結果,結晶の組成は目的物である(Ca,Bi)_3(Co,M)_2O_6の化学組成と一致した.室温から800℃における測定の結果,(Ca,Bi)_3(Co,Cu)_2O_6,および,(Ca,Bi)_3(Co,Fe)_2O_6単結晶(c軸方向)はp型半導体であることがわかった.出力因子は測定温度範囲においていずれの単結晶(c軸)も温度の上昇に伴い増加し,また,(Ca,Bi)_3(Co,Fe)_2O_6,および,(Ca,Bi)_3(Co,Cu)_2O_6ともドープされていないCa_3Co_2O_6よりも高くなることがわかった.
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