Research Abstract |
ガスタービン入り口温度は1500℃に達し,タービン翼材であるNi基超合金の融点1350℃を超えており,精巧な空冷システムは不可欠である.平成15年10月に北大で行われた金属学会秋期大会の材料戦略セッションにおいて,全日空の杉浦氏より,タービン翼の空冷流路を起点とするき裂進展により動翼が破壊するという衝撃的な事例が報告された.本研究ではその破壊メカニズムを明かにするとともに,先進単結晶超合金におけるこの破壊のリスクを検証する.また,大手ガスタービンメーカの技術者から,シュラウドと呼ばれる部位には曲げ応力が加わるが,単結晶翼ではデータが少ないため数式化のための基礎的研究が必要とのアドバイスを得た.そこで,本研究では,これまでの研究成果,即ち,先進単結晶超合金における低温でのクリープ強度低下および単結晶固有の塑性異方性の観点から,従来の研究の盲点となっている,空冷孔を起点とするき裂進展とシュラウドの曲げ変形に関して体系的に研究を行うことを目的とした結果下記のような知見を得た. 1 強度試験 供試合金を用いて,航空機の離陸時においてガスタービン動翼の空冷流路付近に負荷される低温高応力下,即ち750℃,500〜750MPaでクリープ試験を行った.さらに,低温高応力部位の周囲まで考慮して,900℃,392MPaで試験を行った.単結晶Ni基超合金にはクリープ強度の顕著な引張/圧縮異方性が存在する.空冷孔付近は,熱応力により圧縮応力も負荷される.また,曲げ変形においては,試験片上下面においてそれぞれ圧縮応力と引張応力が同時に負荷される.こうしたことから,合金の圧縮クリープ強度を知ることは重要である試験条件は引張クリープ試験条件に準じた条件で行った.その結果,先進合金では圧縮クリープ強度が引張クリープよりも低いために圧縮応力保持を伴うような低サイクル疲労および熱疲労強度が低下することを見出した. 2 透過型電子顕微鏡観察 これまで,一般的に単結晶Ni基超合金における降伏後の引張/圧縮異方性は転位の交差すべりモデルにより説明されていたが,高分解能透過型電子顕微鏡を用いて,変形双晶形成の異方性に基づくことを世界に先駆けて見出し,その結果を"Scripta Materialia"に投稿し受理された.
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