Research Abstract |
本研究は,宇宙科学研究本部と連携を計りながら,プラズマ生成が均一かつ推力密度が高いマイクロ波放電型イオンエンジンを開発することを目的とした. エンジンの設計の際に,従来半ば経験的に行われてきた手法にかわり,シミュレーション技術を駆使した.10cm級,3cm級のマイクロ波放電型イオンエンジンの実験とシミュレーションを有機的に組み合わせてエンジン開発の効率化を計った. スラスタの最適な形状を設計するため,電磁波解析に有効なFDTD法(Finite Difference Time Domain),及び粒子挙動解析に有効なPIC法(Particle in Cell)を用いて,数値解析を行い,以下の結果を得た. 1.マイクロ波を放射するアンテナの設計則を得ることができた.すなわち,アンテナの特性値(位置,大きさ,本数)の伝播効率への依存性が明らかになった. 2.磁場形状及びアンテナ形状の設計指針を得ることができた.すなわち,磁場形状及びアンテナ形状とマイクロ波からプラズマヘのエネルギー伝送効率の関係を明らかにした. これらの成果を実験にフィードバックすることにより,10cm級イオンエンジンにおいて,アンテナ形状及び磁場形状の最適化を行った.その結果,マイクロ波投入電力32W,推進剤流量2.45sccmにおいて推進剤利用効率0.62,イオン生成コスト276W/Aを達成した.また,プラズマ生成領域の内部診断を行い,更なる性能向上のための指針を得ることができた. 一方,3cm級イオンエンジンにおいても計算及び10cm級イオンエンジンで得られた知見をもとに,最適化を行った結果,推進剤流量0.2sccm,投入マイクロ波電力8Wにおいて,イオン生成コスト611W/A,推進剤利用効率0.91,推力0.79mN,推進効率0.58を得た.この推力密度は0.4mN/cm^2と従来のものよりも大幅に向上することに成功した.
|