2004 Fiscal Year Annual Research Report
複数の雄形質に基づく雌の配偶者選択と,それに適応した産仔調節機能の解明
Project/Area Number |
16570012
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
狩野 賢司 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40293005)
|
Keywords | 配偶者選択 / 性淘汰 / 繁殖戦略 / 産仔調節 / 行動生態学 / グッピー |
Research Abstract |
本研究の目的は,雌の配偶者選択の利益と産仔調節機能を統括した新たな繁殖戦略の研究モデルを提唱するため,沖縄産野生化グッピーを対象に,複数の雄形質に対する雌の配偶者選好性および配偶した雄による雌の産仔調節機能を解明することである。この目的遂行のため,平成16年度は以下の調査を行った。 1.研究に使用している沖縄・比地川の個体群における雌の配偶者選択をさらに明確にするため,雄と直接に接触できる条件で尾鰭長の異なる雄への選好性を調査したところ,雌は初期の視覚だけによる接触時には雄の尾鰭長を識別していないが,交尾に至るまでの接触の過程で尾鰭の長い雄への選好性が低くなることが判明した。さらに,そのような雌選好性に対応して,尾鰭の長さの異なる雄は代替繁殖戦術の頻度など雌への配偶行動が異なることが明らかになった。これらの結果をまとめた論文は,Behaviour誌に受理され,現在印刷中である。 2.特定の雄形質に対する雌の配偶者選好性の強さを明らかにするため,同一雄のデジタル動画像を加工して,ターゲットとする形質だけが異なる雄の2つの画像を雌に提示し,雌の選好性がどの程度異なるかを定量化する実験手法を構築した。その際他個体群における先行研究例を参照するとともに,入念な予備実験を行い,本研究個体群での最適な実験条件を明らかにした。 3.配偶相手が雌の選好性に合致しているかどうかによって,雌が体内で配偶者選択を行い,産仔調節をしている可能性を検討するため,両親が同じ2個体の雌に対し,それぞれ全長が等しく尾鰭長が異なる雄と配偶させ,産まれてきた子の数や成長などを比較した。その結果,雌が好む尾鰭の短い雄と配偶した雌と比較して,好みでない尾鰭の長い雄と配偶した雌は,産仔数が少なく,また子の成長の程度なども低い傾向が見られた。これらについては,現在さらに実験例を増やして詳しく検証中である。
|
Research Products
(1 results)