Research Abstract |
本研究では,複数の雄形質に対する雌の配偶者選好性と,その利益やコストの違いに対応した雌の産仔調節機能を統括した新たな繁殖戦略研究モデルを構築することを目的として,平成17年度は以下のような研究成果を得た。 1.研究対象の沖縄・比地川産グッピーの雌は,全長の大きな雄を配偶相手として好んでいるが,雄の尾鰭の長さを配偶者選択の指標とはしていない(Karino & Kobayashi 2005,Behaviour)。そこで,雄の長い尾鰭は全長を大きく見せて雌に選んでもらうための騙し戦略ではないかという仮説を検証するため,尾鰭の長い雄と配偶した雌のコストを検証した。その結果,尾鰭の長い雄の娘は,尾鰭の短い雄の娘よりも体サイズが小さく,また産仔数が少ないなど繁殖効率も低いことから,尾鰭の長い雄と配偶することは雌にとってコストとなることが明らかになった(Karino et al. 2006,Behaviour)。また,尾鰭の長い雄と配偶した雌は,尾鰭の短い雄と配偶した雌よりも産仔数が少なかったが,これは尾鰭の長い雄と配偶したコストを低減し,次回の繁殖により大きな投資をするための雌の産仔調節による繁殖戦略であることが示唆された。 2.本種の雌は,オレンジ色のスポットの鮮やかな雄を好むが,雄のオレンジ体色はカロテノイド依存形質であり,グッピーでは河川の藻類を摂取することでオレンジ体色が鮮やかになる。したがって,雌はオレンジ体色の鮮やかな雄を選ぶことで採餌能力の高い子をつくれるという利益を得ていると考えられているが,この仮説を検証した。その結果,親の藻類採餌能力は子へと有意に遺伝することが実証され,雌はオレンジ体色の鮮やかな雄と配偶することで採餌能力の高い子を得ていることが明らかになった(Karino et al. 2005,Behavioral Ecology and Sociobiology)。現在,このような利益をもたらすオレンジ体色の鮮やかな雄と配偶することで,雌がどのような産仔調節を行っているか検証中である。
|