2006 Fiscal Year Annual Research Report
複数の雄形質に基づく雌の配偶者選択と,それに適応した産仔調節機能の解明
Project/Area Number |
16570012
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
狩野 賢司 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (40293005)
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Keywords | 配偶者選択 / 性淘汰 / 繁殖戦略 / 産仔調節 / 性比調節 / 行動生態学 / グッピー |
Research Abstract |
本研究は,沖縄産野生化グッピーを材料に複数の雄形質に対する雌の選好性及び産仔調節を明らかにし,雌の配偶者選択の利益とそれに応じた産仔調節機能という新たな繁殖戦略研究分野を開拓することを目的とし,平成18年度は以下のような成果を得た。 1.これまでの研究から,グッピーの雌は全長の大きな雄を好むが雄は尾鰭を伸ばすことで全長を大きく見せており,尾鰭が長い雄と配偶した雌は娘が小さく繁殖効率も低いというコストがあることが明らかになった。そこで,雄の尾鰭の長さと子の性比を調べたところ,尾鰭の長い雄と配偶した雌は雄偏りの性比で出産しており,尾鰭の長い雄との配偶コストを低減させていることが明らかになった(Karino et al. 2006, Ethology)。また,長い尾鰭は雄の遊泳能力を減少させており,尾鰭の長い雄は流れの緩やかな環境に生息範囲が制限されていることが判明した(Karino et al. 2006, Zoological Science)。 2.本種の雄におけるオレンジ色のスポットはカロテノイド依存形質であり,オレンジ色の鮮やかさは河川での藻類採餌能力を示すと示唆されていた。そこで,野外で採集した雄のオレンジスポットの鮮やかさを計測し,その後室内実験により藻類採餌能力を測定したところ,野外で鮮やかなオレンジスポットを示していた雄は藻類採餌能力が高いことが実証された(Karino et al. 2007)。また,オレンジスポットの鮮やかさだけを操作した雄ビデオ映像を用いた厳密な実験により,雌はオレンジ色の鮮やかな雄に高い選好性を示すことが確認された(Sato & Karino 2006)。雄の藻類採餌能力は子へと遺伝することから,雌はオレンジスポットの鮮やかな雄を配偶相手として選ぶことで子の藻類採餌能力を高めるという間接的利益を得ていることが示唆された。
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Research Products
(5 results)