2005 Fiscal Year Annual Research Report
生物種間の相互作用の進化的変化が種多様性の創出・維特にはたす役割の理論的研究
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16570015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山内 淳 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (40270904)
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Keywords | ミトコンドリア / 遺伝的カースト分化 / 同所的種分化 / 理論 |
Research Abstract |
まず「ミトコンドリアから核への遺伝子転移の速度」に関する研究を行った。ミトコンドリアは元々単独生活をしていたバクテリアが起源だと考えられているが、長い共生関係の間にその遺伝子の多くが核へと移行しており、しかもその移行の程度は植物と動物では大きく異なる。こうした遺伝子の移行が進むメカニズムについて、ミトコンドリア系統間の競走と細胞質の遺伝様式に注目し理論モデルにより解析した。その成果はGenetics誌に受理・公表された。次に「社会性膜翅目におけるSymmetric Social Hybridogenesisの存続条件」の解明に取り組んだ。膜翅目昆虫に見られる真社会性のシステムでは、通常、同一のメス個体が餌などの環境条件に違いにより女王とワーカーに分化する。しかし近年、遺伝的なカースト決定機構が見つかってきた。ある種のアリでは集団中に2タイプのゲノム型があり、それをホモ接合で持つ個体は女王に、ヘテロ接合の個体はワーカーになる。膜翅目は半倍数性性決定であることに注目すると、このシステムでは女王とワーカーを含む正常コロニーは、女王が異なる遺伝子型を持つオスと多回交尾する場合にしか生じない。そのためこのシステムの存続には、2タイプの女王と2タイプのオスの共存が必要条件である。しかしそれは十分条件ではない。そこでこの遺伝的カースト決定機構の存続条件を理論モデルにより解析した。その成果はJournal of Theoretical Biology誌に受理され印刷中である。さらこ「第3の形質が同所的種分化を促進するメカニズム」について解析を進めた。同所的種分化を引き起こすメカニズムの1つとして、2方向性の配偶者選択による分断化淘汰の役割がHigashiら(1999)らにより理論的に解析されている。本研究では、オスの形質とそれに対するメスの好みの進化によって働く配偶者選択の力学に、両者の相互作用を促進する別な形質を導入することが種分化プロセスに与える影響を主に計算機シミュレーションにより解析した。本研究の成果は現在投稿中である。
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Research Products
(2 results)