2004 Fiscal Year Annual Research Report
寄主植物の雌雄性が植食性昆虫とそ寄生蜂に与える影響
Project/Area Number |
16570017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
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Keywords | ムモンハモグリガ / ヒサカキ / 潜葉性昆虫 / 寄主選好性 / 開葉フェノロジー / 窒素含有量 / 早期落葉 / 雌雄異葉株 |
Research Abstract |
A.奈良市近郊の高円山にてヒサカキの開葉でフェノロジーとヒサカキムモンハモグリガの動態を調査し,以下の結果を得た. 1.開葉フェノロジーは雌株が雄株よりも約2週間早い. 2.葉厚は雄株・雌株間に違いはなかったが,当年葉の窒素含有量に違いが見られ,雌株は雄株より高かった. 3.葉の摂食面積の調査から,外食性食葉昆虫は旧葉を選好する傾向にあったが,雄株・雌株に対する違いはなかった. 4.ヒサカキムモンハモグリガは当年葉にはほとんど潜孔を作らず,旧葉のみに潜孔を作り,また,雌株より雄株を選好する傾向にあった. 5.ヒサカキハモグリガの体サイズは,雌株と雄株の潜孔から羽化した成虫間で違いはなかった. 6.ヒサカキムモンハモグリガの幼虫を人為的に殺した葉,幼虫を生かしたままの葉,潜孔がない葉で落葉様式を比較したところ,人為的に殺した葉は潜孔がない葉よりも早期に落葉する傾向にあり、幼虫を生かしたままの葉は幼虫が蛹化するまでほとんど落葉しなかった. 以上の結果より,以下の点が指摘できる. 1.ヒサカキの当年葉は旧年葉よりも窒素含有量が高いにもかかわらず,食葉性昆虫は当年葉を選好せず,その傾向はヒサカキムモンハモグリガで顕著であり,また,ヒサカキムモンハモグリガは窒素含有量が低い雄株を選好していることから,栄養素以外の要因が葉に対する選好性を規定している. 2.ヒサカキムモンハモグリガ幼虫は早期落葉を抑止している.このことは食葉性昆虫で初めての知見である. B.北海道大学農学部と大阪府立大学農学部のムモンハモグリガ科の標本を調査したところ,旧北区から記録されている2種に近縁は種が見つかった。さらに,高円山から新北区から記録されている種に近縁な1種を採集した.このことは日本のムモンハモグリガ相は新旧北区の要素を含んでおり,生物地理学的に興味深い特徴を有していることを示している.
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