2005 Fiscal Year Annual Research Report
寄主植物の雌雄性が植食性昆虫とそ寄生蜂に与える影響
Project/Area Number |
16570017
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
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Keywords | カテキン / 雌雄異株 / ヒサカキ / ムモンハモグリガ / 落葉抑制 / 未記載種 / 開葉フェノロジー / 防御 |
Research Abstract |
A.昨年度に引き続き奈良市近郊の高円山にてヒサカキのフェノロジーとヒサカキムモンハモグリガの動態を調査し,以下の結果を得た。 1.2004年同様、開葉フェノロジーは雌株が雄株よりも早かった。 2.当年枝の伸長は雄株が雌株より大きかった。 3.葉面積は第2葉を除き雄株が雌株より大きく、当年枝あたりの当年葉数も雄株が雌株より多かった。 4.植食性昆虫に対する防御物質と考えられているカテキン類の含有量は当年葉、旧葉ともに雄株・雌株間で違いはなかった。 5.2004年はヒサカキムモンハモグリガの密度は雌株より雄株で高かったが、2005年はそのような傾向は認められなかった。 6.2004年と同様に、ヒサカキムモンハモグリガの幼虫を人為的に殺した葉,幼虫を生かしたままの葉、潜孔がない葉で落葉様式を比較したところ、2004年と同じ結果がえられた。すなわち人為的に殺した葉は潜孔がない葉よりも早期に落葉する傾向にあり、幼虫を生かしたままの葉は幼虫が蛹化するまでほとんど落葉しなかった。 7.蛹化後の要因別死亡率を樹に着いたままの葉と実験的に地上に置いた葉とで比較したところ、高い捕食率により地上での死亡率が樹上よりも高かった。 以上の結果より、以下の点が指摘できる. 1.ヒサカキでは雄株は雌株よりも光合成器官や栄養成長に多くの資源を投資しているが、植食性昆虫に対する防御への投資量に雌雄間で違いはない。 2.ヒサカキの雌雄株間ではヒサカキムモンハモグリガの密度の違いは顕著ではない。 3.ヒサカキムモンハモグリガ幼虫はヒサカキの早期落葉を抑止し、その適応的意義は生存率の上昇にある。 B.2004年に続き北海道大学農学部所蔵のムモンハモグリガ科標本をさらに調査したところ,未記載種と思われる種が3種見つかった。
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