2006 Fiscal Year Annual Research Report
寄主植物の雌雄性が植食性昆虫とそ寄生蜂に与える影響
Project/Area Number |
16570017
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
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Keywords | カテキン / 雌雄異株 / ヒサカキ / ムモンハモグリガ / 過敏応答 / 強制産卵 / 産卵選好性 / 初期死亡率 |
Research Abstract |
A.ヒサカキの形質とヒサカキムモンハモグリガの当年葉・旧年葉に対する選好性の関係について 1.2003〜2006年に調査した198本のヒサカキのうち、雌雄の発現が変化した個体は2個体あり、頻度は低いが性の発現は変化しうることが示唆された。 2.植食性昆虫に対する防御物質と考えられているカテキン類の含有量は当年葉、1年葉ともに雄株・雌株間で違いはなく、1年葉よりも当年葉で有意に高かった。 3.窒素含有量は、当年葉、1年葉ともに雄株・雌株間で違いはなく、1年葉よりも当年葉で有意に低かった。 4.袋掛けによりヒサカキムモンハモグリガ雌成虫に当年葉と旧年葉へ強制的に産卵させ、孵化後の成長過程を比較したところ、当年葉では、孵化直後の死亡率が約3倍高かった。 5.昨年までの結果から、ヒサカキムモンハモグリガの密度は、ヒサカキの雌雄株間では有意な違いはなく、当年葉にはほとんど産卵しないことがわかっている。 6.以上の結果から、ヒサカキムモンハモグリガの雌成虫が当年葉に産卵しない理由として、その栄養が旧年葉よりも劣り、カテキン含有量が高いことに加え、新年葉の潜孔形成に対する防御、すなわち過敏応答が大きく関与していることがわかった。 B.気温の年次変動とヒサカキムモンハモグリガの生育期の関係 1.2004〜2006年の4調査年の野外における越冬直前から蛹化までの有効積算温量を求めたところ、2023〜2143度日であり、年次間の違いは小さかった。 2.終齢幼虫の頭幅を指標とした体サイズには年時間で有意な差は認められなかった。 3.蛹化時期は年次間で最大20日のずれが認められた。 4.以上の結果は、本種の羽化期は単なる気温の高低にではなく、或る体サイズに達するまでの成長期間に依存することを示している。
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