2005 Fiscal Year Annual Research Report
適応度地形と進化動態:理論と実験進化系・分子疫学データによる検証
Project/Area Number |
16570020
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 顕 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (90211937)
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Keywords | 流行予測 / インフルエンザ / 交差免疫 / 非線形共鳴 / 制限酵素認識配列の進化 / ファージエスケープ / 包含関係 / ワード頻度 |
Research Abstract |
○抗原型変異株と宿主の集団免疫・交差免疫に基づく伝染病流行予測。 インフルエンザやデング熱など異る抗原サブタイプが時期をずらして流行する病原体の有効な予測モデルを構築するため、交差免疫と感染の季節性を考慮した疫学モデルの非線形共鳴、系統ごとの振動パタンの同期と非同期、流行の順序などを学モデルにもとづき解析し、系統ごとに流行年のずれる非同期振動は交差免疫が弱いときに起こりやすく抗原性の近い系統は流行年の同調した複数年周期振動を示しやすいことなどを明らかにした。 ○制限酵素の認識配列の進化。 バクテリアの制限・修飾酵素系は、非自己の(=修飾されていない)DNAを特定の認識配列部位で切断することによりファージの感染を防ぐ生体防御システムである。このホスト生体防御により、寄生者ゲノムの塩基配列には強い自然選択が働く。実際、ファージゲノム中にはホストの制限酵素によって認識される部分配列が極端に少なく、restriction avoidanceと呼ばれている。当課題では、制限酵素による切断という選択圧のもとで、制限酵素の認識配列がどう進化するか、そしてこの選択圧がゲノムの部分配列出現頻度をどう改変するかについての包括的な数学理論を構築して解析した。2つの制限酵素の認識配列が包含関係(一方がもう一方の部分配列)にあるとき、この両者の間にファージとの感染動態(ファージ切断部位の修飾型の出現とRバクテリアへの感染の動態)を通じて強い競争が働くことを、感染圧が強いほど認識配列の長さは短くなる方向に進化することなどを理論的に示した。REBASE上の認識配列探索によりこのような包含関係にある制限酵素が同じバクテリア種内に数多く見つかり、上記の制限酵素間競争が実際に起こっていることが示唆された。
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Research Products
(5 results)