2005 Fiscal Year Annual Research Report
自己と非自己の差異が植物の個体間競争に与える影響のクローンとキメラを用いた解析
Project/Area Number |
16570021
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鈴木 準一郎 首都大学東京, 都市教養学部理工学系, 助教授 (00291237)
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Keywords | 環境 / 植物 / 生態学 / クローン / キメラ / 競争 |
Research Abstract |
野外で植物が単独に存在することは極めて稀であり、複数の個体や種が集団として通常は生育している。そのため、固着性である植物では、隣接する他個体や他種との間に資源を巡る競争が生じ、同一の資源を奪い合う個体の適応度は減少する。この過程で、植物個体は、自己を取り巻く物理的環境からの情報を感知し、それに応じて反応を可塑的に変化させることは以前からよく知られている。だが、競争の相手が自分とおなじ遺伝子を共有するか、すなわちクローンであるか、まったくの他者(非自己)であるかによって、適応度の減少を最小にするため植物個体がとるべき反応は大きく異なる。しかし、自己をとりまく自分以外の植物個体をどのように植物が認識しているかについての知見はほとんどない。脳や神経などの情報処理の器官を持たない植物が、どのように自他を区別し、非自己をどのように認識しているのだろうか。本研究の目的は、クローン個体や接木の手法を用いて作り出したキメラ個体を利用して、遺伝的には完全に同一な個体間にみられる競争と遺伝的には独立な個体間にみられる競争にどのような違いがみられるかを実験により比較し、その過程を測定することを通じて、植物における自己と非自己の差異が競争におよぼす影響を定量的に明らかにし、植物の自他認識の機構を定性的に解明することである。 本研究では、「植物個体は、地下部(根)の接触による化学物質の伝達を通じて、自己と非自己を識別する」という仮説を提唱し、以下の予測を実験的に検証した。予測:遺伝的に異なる個体間での競争では、根の成長方向は他個体の位置に影響されないが、クローン個体間あるいはキメラ個体間での競争では、根は、他個体とは反対の方向へ成長する。 ナス(Solanum melongena L.)を用い、接ぎ木の手法により作成したキメラ個体を用いて、上記予測の実験的な検証を試みた。結果は、現在解析中である。
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