2004 Fiscal Year Annual Research Report
ジベレリン酸シグナリングによる遺伝子稼働化を促す分子機構の解析
Project/Area Number |
16570026
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鷲尾 健司 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助手 (50241302)
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Keywords | イネ / 植物ホルモン / ジベレリン / 種子 / 発芽 / 遺伝子発現 / 転写制御 / エピジェネティック制御 |
Research Abstract |
本研究は植物の成長に必須な植物ホルモンであるジベレリン酸(GA)の作用に注目し、イネ種子でのGAによる発芽促進効果に関わる生体ネットワークを調べることにより、GAの作用メカニズムの詳細を理解することを目的としている。穀物種子での発芽促進に関わる生理作用遺伝子の発現は、GAの作用により初発的に発現する転写調節因子などの、GA初期反応遺伝子の機能に支えられた二次的な反応であることが分かっている。そこでGAによる遺伝子制御のリアルなしくみを知るため、初期反応遺伝子自体の発現機構を調べた。初期反応遺伝子のGA応答性は、あまりプロモーター上流域に依存しておらず、様々な機能ドメインが遺伝子領域全体に存在していることが分かった。特に5'側非翻訳領域に存在するlarge intronにはenhancer活性を検出した。Intron enbancerに関する知見は少ないが、Arabidopsisの花成を制御する重要なHox geneであるAG、FLCで詳細な解析がなされている。いずれの遺伝子でもintron enhancerがその発現特性を決めるが、特筆すべきことにlarge intronには、遺伝子領域をクロマチン構造の中に押し込め、静的な状態に保つ情報が存在するらしい。これらを踏まえると、GAが作用して最初に起こる核内イベントとは、クロマチン領域に拘束されている初期反応遺伝子の可動であると推定された。特別なクロマチン構造の形成には様々な遺伝子修飾が必要なことは周知であるため、bisulfite sequencing法を用いてイネ発芽種子でのGA初期反応遺伝子のDNAメチル化状態の検出を試みた。その結果、初期反応遺伝子のプロモーター領域は、GAの非誘導組織では高度にメチル化されていることを確認した。これらの結果は、植物の生活史を通したGAの多面的な作用の1つの要因として、標的遺伝子のepigeneticな制御が重要であることを示唆するものであった。
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