2005 Fiscal Year Annual Research Report
ジベレリン酸シグナリングによる遺伝子稼働化を促す分子機構の解析
Project/Area Number |
16570026
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鷲尾 健司 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助手 (50241302)
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Keywords | イネ / 植物ホルモン / ジベレリン / 種子発芽 / 胚乳 / エピジェネティクス / 遺伝子修飾 / クロマチン制御 |
Research Abstract |
DELLA proteinはジベレリン(GA)情報伝達系で機能する抑制因子であり、GAはその抑制作用を解除することで必要とする遺伝子機能の発現を促す。DELLA proteinの機能は植物間で高度に保存されているが、その構成は植物ごとにまったく異なる。Arabidopsisでは、5種類のDELLA proteinが異なる発現様式で機能冗長しながら作用するが、イネではSLR1が単独で全てのGA作用を統括する。DELLA proteinの具体的な作用様式は未だに不明であり、唯一のSLR1がどうやってイネの成長を統御するのかという問題は、植物の生活環を支えるGAの多面的作用を理解する上で重要な課題となる。本研究では、GAの発芽促進効果に注目して、そこで機能する制御遺伝子の発現機構を調べることにより、GA作用の詳細を理解することを目的とした。GAが初動的に発現を促すGAMybなどの、発芽制御遺伝子の発現には、転写開始点近傍の調節配列や、長大なイントロンにあるエンハンサー様活性が必要であることが分かった。これらの特徴は、既知のクロマチン制御を受ける遺伝子と似ていたので、クロマチン動態の一要因であるDNAのメチル化状態を調べてみると、GA作用により有意に変動する修飾部位をGAMybのプロモーター領域に検出した。また同じ遺伝子領域が、非誘導組織ではより高度にメチル化されていることが分かった。一般的にDNAのメチル化は遺伝子の発現を抑制する。GAの標的遺伝子は、発生や成長に併せてクロマチンの動態を変化させることにより、GA情報伝達系との連携を柔軟に変化させて、必要な遺伝子機能を発現するのであろう。また、このことは、DELLA proteinが遺伝子の遷移状態の変化に関わるクロマチン制御因子である可能性を示唆するものであった。今後は、これらの機能を支える分子装置の実体を探ることが必要となる。
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Research Products
(2 results)