2004 Fiscal Year Annual Research Report
光合成初期反応におけるチトクロム間およびチトクロム内の電子伝達機構の研究
Project/Area Number |
16570035
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
永島 賢治 東京都立大学, 理学研究科, 助手 (80264589)
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Keywords | 光合成 / 電子伝達 / チトクロム / 反応中心 / 遺伝子操作 / 酸化還元中点電位 |
Research Abstract |
すでに確立している紅色光合成細菌の変異導入系を用いて、反応中心複合体のチトクロムムサブユニットに対して部位特異的変異導入を行った。変異はサブユニット表面および内部に位置する荷電アミノ酸を中心に導入し、今年度半ばまでに約30種の変異株を作成した。生理的電子供与体からこれら変異チトクロムへの電子伝達速度を比較することにより、4つ含まれるc型ヘムのうち、サブユニットの最も末端に位置するヘムが直接の電子受容体として働いていることが明らかとなった。また、生理的電子供与体との分子認識には静電的な相互作用が最も重要であることが示唆され、そこに働く点電荷の位置を立体構造上に具体的に推測することが可能となった。本研究のもう一つの目的である酸化還元中点電位の変化が電子伝達速度に与える影響に関しても新たな知見が得られつつある。サブユニット内部でヘム近傍に位置するアミノ酸を異なる荷電を持つように変異させたとき、ヘムの中点電位を最大250mVまで変化させることができた。また、ヘム中央の鉄分子への配位子であるメチオニンをシステインに置換した場合では450mVもの電位低下が観察された。電子伝達経路の中途に位置するヘムの中点電位をこのように大きく変化させたとき、光合成電子伝達速度は数10倍遅くなった。本研究で得られたこれら一連の変異株は、タンパク質内部での長距離かつ方向性を持った電子伝達の機構を物理学的に解明するための優れた材料となる。また、これら変異株の光合成による生育速度は野生株に比べ極端に低下していた。このことはヘムの中点電位が進化の過程で適切に調節されてきたことを示す。
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Research Products
(4 results)