2005 Fiscal Year Annual Research Report
光合成初期反応におけるチトクロム間およびチトクロム内の電子伝達機構の研究
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16570035
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
永島 賢治 首都大学東京, 都市教養学部理工学系, 助手 (80264589)
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Keywords | 光合成 / 電子伝達 / チトクロム / 反応中心 / 酸化還元中点電位 / 部位特異的変異 / 光合成細菌 |
Research Abstract |
紅色光合成細菌Rubrivivax gelatinosusの反応中心複合体に結合するチトクロムサブユニットをBlastochloris viridisのものに置き換えたキメラ反応中心を材料に、含まれている4つのヘムcの酸化還元中点電位を変える部位特異的変異の評価をコンピーターシミュレーションにより詳細に行った。予測値は、主に昨年度に作製した実際の変異タンパクでの測定値と良い一致を示した。光酸化された反応中心のバクテリオクロロフィル二量体(スペシャルペア)を還元するこれら4つのヘムの酸化還元中点電位は、変異導入無しのキメラ反応中心では-60,310,60,400(mV)の順に並んでいるが、変異導入した株のひとつでは400mVの高電位ヘムが0mVとなった。これに伴う静電的相互作用により60mVのヘムが130mVとなり、低-高-低-高の中点電位配置が低-高-低-低となった。閃光照射による電子伝達速度の測定の結果、この変異によりスペシャルペアの還元速度は約100倍遅くなった。このことは、エネルギー的に不利に見える低電位ヘムを経た電子伝達が実際に起こっていることを示すと共に、両末端の電子供与体・受容体の間に有意な電位差があれば、最終的に電子はあたかも熱力学的なローラーコースターを滑るように伝達されるというモデルを支持した。一方、本来マイクロ秒オーダーで完結するこの反応が100倍遅くなっても光合成電子伝達の順向き方向への全過程に及ぼす影響、さらには細胞の生育に及ぼす影響は小さいものであった。4つのヘムの中点電位が低-高-低-高となる配置を進化の過程でかたくなに保存してきた理由を明らかにするためのさらなる変異導入が必要である。
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Research Products
(4 results)