2005 Fiscal Year Annual Research Report
チラコイド膜機能発現における二種の酸性脂質の役割-その特異性と相同性の解明
Project/Area Number |
16570036
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 典裕 東京薬科大学, 生命科学部, 助手 (50266897)
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Keywords | 酸性脂質 / sulfoquinovosyl diacylglycerol / phosphatidylglycerol / 光化学系I / 光化学系II / シアノバクテリア / チラコイド膜 |
Research Abstract |
SQDGの生理学的役割をシアノバクテリアSynechococcus sp.PCC7002で吟味するため、本研究では同種からSQDG合成経路上の酵素UDP-sulfoquinovose synthaseの遺伝子sqdBを破壊することで、SQDG欠損変異株を作製・解析した。その結果、PCC7002ではこれまでに報告されているSynechococcus sp.PCC7942と同じく、SQDG欠損変異は生育や光合成系に悪影響を及ぼさないことが明らかとなった。つまり、SQDG欠損変異により細胞が致死的に、あるいは光化学系IIが損傷してしまうとの報告がなされたシアノバクテリアSynechocystis sp.PCC6803や緑藻クラミドモナスとは対照的な結果が得られた。さらに、sqdBの塩基配列で分子系統樹を描くと、PCC7002はPCC7942と同グループに、したがってPCC6803やクラミドモナスとは別グループに位置することが示され、PCC6803のSQDGへの生理学的要求性とsqdB遺伝子がシアノバクテリアから葉緑体への進化の過程で同時に選択されたとする本研究代表者の説を支持した。 一方、PGはPCC6803のPG欠損変異株の解析から、光化学系I複合体の高次構造の維持に重要であることがこれまでに示されている。本研究でPCC6803のSQDG欠損株を用いて解析したところ、SQDG欠損により光化学系I複合体の高次構造は乱されないこと、つまりSQDGはPGとは異なり同複合体の高次構造の維持には貢献しないことが明確となった。また、このSQDG欠損株から単離したチラコイド膜をフォスフォリパーゼ処理し、PGを特異的に分解させると、つまりSQDG、PGの両酸性脂質を欠損させると光化学系I複合体がサブユニットレベルにまで分解された。このサブユニットへの分解は、PGあるいはSQDGの単独変異株では決して起こらなかった。したがって、この結果は、SQDG、PGいずれかの酸性脂質の存在が光化学系I複合体のサブユニットの会合に重要であること、つまり両酸性脂質がその会合に対して共通の役割を担っていることを示唆している。
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Research Products
(2 results)