Research Abstract |
カエルは,口からでなく腹側の皮膚で水吸収をしたり,膀胱に水を貯蔵し,それを再吸収することで,生体の水恒常性を維待している。このようなカエルに特有な水吸収機構に関与する水チャネルアクアポリン分子(AQP-h1,AQP-h2およびAQP-h3)を遺伝子クローニングすることで,両生類の水バランスの分子細胞学的研究を展開してきた。アマガエル膀胱に発現するAQP-2は,抗利尿ホルモン(ADH)の刺激で顆粒細胞の細胞質から管腔膜へと輸送され,水の再吸収に関与する。免疫電顕法でAQP-2は,細胞質に存在する小胞に局在し,ADHの刺激で,管腔膜側へ移行することが示された。さらに,リン酸化AQP-h2に対する特異的なペプチド抗体を作製し,AQP-h2小胞輸送におけるリン酸化の影響を検討した。in vitroで膀胱にADH処理すると,リン酸化AQP-h2タンパク質は短時間(2分以内)で検出され始め,顆粒膜細胞の管腔膜へ局在する傾向を示した。AQP-h2を含む小胞輸送の細胞質から管腔膜への移行にAQP-h2タンパク質のリン酸化が関与していることが示唆された。両生類のADHであるアルギニンバソトシン(AVT)の生合成は哺乳類と異なり,カエルではプロAVTとAVTの中間体であるハイドリン(hydrin)が,水吸収能を高めることが知られている。カエル皮膚を用いた刺激実験でAVTは,ハイドリンよりほぼ2倍の水吸収能を示した。このときの蛍光免疫染色の結果は,AVTは,2種類のアクアポリン(AQP-h2およびAQP-h3)が細胞質から管腔膜に移行させることで水吸収が高まるのに対して,ハイドリンは,AQP-h2の管腔膜への移行を刺激するが,AQP-h3には作用しないことを示唆した。この知見は,AVTがハイドリンより約2倍の水吸収能力をもつことと一致していた。
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