2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本の干潟・河口域の多毛類相の解明:特に「普通種」の再検討
Project/Area Number |
16570080
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐藤 正典 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (80162478)
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Keywords | 環形動物多毛類 / ゴカイ科 / カワゴカイ属 / 生殖群泳 / 河川感潮域 / 有明海 / 藤前干潟 / チロリ科 |
Research Abstract |
1.有明海沿岸の大牟田川河口干潟において、5科11種の多毛類の生息を確認し、各種の分布特性を明らかにした。特に、優占種であるゴカイ科3種(アリアケカワゴカイ、ヤマトカワゴカイ、イトメ)については、年間を通した分布と生息環境(塩分、底質粒度)との関係を明らかにした(Benthos Research誌に論文投稿予定)。また、個体群動態から生活史の概略を明らかにした(論文準備中)。 2.大牟田川では、年間を通した大潮時の夜間満潮時の定期調査によって、同所的に生息するゴカイ科4種(アリアケカワゴカイ、ヤマトカワゴカイ、ウチワゴカイ、イトメ)の生殖群泳を確認し、それらの空間的および時間的な分離について検討した(論文がZoological Science誌に受理され印刷中)。生殖群泳の時期と場所が大きく重複する近縁2種(アリアケカワゴカイとヤマトカワゴカイ)については、両種の混成比、体サイズ組成、性比などについて詳しく比較した。さらに、実験室での人工受精により、2種間で比較的容易に交雑受精が起こり、少なくともその一部は正常に発生を続けることがわかり、野外での生殖隔離機構について考察した(論文がMarine Biology誌に掲載)。 3.1997年と2002年に有明海全域(約90定点)で採集された多毛類標本の検討を行い、それぞれ42科と46科に分類した。各科の種レベルの同定作業は今なお継続中であるが、多くの未記載種または日本未記録種が含まれていると思われる(今後も研究継続の予定)。 4.チロリ科については、日本各地の干潟・浅海域から採集された約700個体を検討し、2属15種を確認し、その分布状況を明らかにした。このうち有明海で採集された1種は未記載種である可能性が高く、また沖縄で採集された1種は日本未記録種であった(論文準備中)。 5.伊勢湾沿岸の藤前干潟における調査によって、11科16種の多毛類を記録した。ここではハマシギなど4種の渡り鳥の糞内容物の検討も行い、ゴカイ科多毛類(特にカワゴカイ属)がハマシギにとって最も重要な食物であることを明らかにした(近日中にBenthos Research誌に論文投稿予定)。
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Research Products
(2 results)