2006 Fiscal Year Annual Research Report
極端な幼形成熟を行うシラスウオ科魚類の多様性と進化
Project/Area Number |
16570082
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
吉野 哲夫 琉球大学, 理学部, 助教授 (50117595)
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Keywords | シラスウオ科 / ハゼ亜目 / 分類 / 熱帯性沿岸魚類 / 幼形成熟 / 新種記載 / 16S rRNA / 分子系統 |
Research Abstract |
平成17年度に引き続き琉球列島各地および小笠原諸島で採集したシラスウオ科魚類について形態学的な比較とミトコンドリアの16S rRNA領域の塩基配列を基にした分類学的な検討を行い、この結果を2006年10月に静岡で開催された日本魚類学会年会において以下の研究発表を行った。 昆 健志・西田 睦・吉野哲夫.幼形進化的シラスウオ属魚類の隠蔽種をいかに命名・記載すべきか? 日本魚類学会2006年度年会,東海大学,静岡.2006年10月8-9日. この発表では日本近海に分布する21種の本科魚類の分類について報告した.いずれの種もハワイ産やオーストラリア産の全ての既知種(3種)とは異なる未記載種であること、琉球列島と小笠原諸島との間では遺伝的に共通する種が極めて少ないなどの点が明確になった。これらの未記載種各種は形態学的な形質だけでは判別が困難であり,新種記載に際してはミトコンドリアDNAの塩基配列情報を分類形質として取り扱う必要があるとの提言を行った.発表に対して得られた意見を基に実用的な記載論文を現在作成中である。 またシラスウオ科魚類(スズキ目)とは別の目に分類されると考えられるが,同様の海産幼形成熟魚の1種が平成18年初頭にフィリピンのボホール島沿岸のサンゴ礁域から採集された.本種は眼後部側面に内耳胞(prootic bulla)と頭部側線管の合流部が接するrecessus lateralisを持つことなどからニシン目ニシン亜目に属する魚類であると判断された.本種はこれまでの形態比較およびDNA解析の結果から,科・属・種いずれも未記載のものと考えられ,今回初めて発見されたものである.本種の発見はシラスウオ科魚類とともに熱帯沿岸域での幼形成熟魚の多様性を示す顕著な例と判断される.この結果についても2006年度日本魚類学会年会で以下の発表を行った。 吉野哲夫・川口 亮・石森博雄・J.Apurado.ニシン目と推定される特異な形態の幼形成熟魚.日本魚類学会2006年度年会,東海大学,静岡.2006年10月8日.
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Research Products
(1 results)