2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドロ虫類Cytaeis属の異型ポリプの位置特異的分化現象に関する自然史学的検証
Project/Area Number |
16570087
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
並河 洋 独立行政法人国立科学博物館, 筑波研究資料センター, 主任研究官 (40249909)
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Keywords | ヒドロ虫 / Cytaeis uchidae / 異形ポリプ / 位置特異的分化 |
Research Abstract |
本研究は,ヒドロ虫類のCytaeis uchidaeおいて位置特異的に分化している異型ポリプの分化要因と機能について立てた仮説「異型ポリプが何らかの群体防御の役割をもち,異群体との接触などの生物的環境要因が引き金となって分化する」を野外観察と室内飼育実験に基づき自然史学的に検証することを目的としている. 平成17年度は,昨年度の研究成果を基にして立てた補助仮説を検証するための研究を実施した. 1.分化要因について 先ず,異型ポリプの分化要因を検討するために,貝殻を脱灰させてCytaeis uchidaeの群体を宿主から分離し,ヒドロ根の繋がり具合から群体数を調べた.その結果,宿主上に複数群体が存在したという痕跡は存在せず,異形ポリプは複数群体の接触により分化するものではないことが判明した.さらに,この研究の過程で,異形ポリプの触手を特徴づける大形刺胞が宿主の殻口部付近のヒドロ根にのみ分化し,殻口付近の通常ポリプに侵入,それを異形ポリプ化させていることが明らかとなった.また,大形刺胞が群体の他の部域に移動しないことが,異形ポリプが局所的に分化する要因であった.宿主貝の殻口のみが本種の幼生の着生場所であること,また,別の科(ウミヒドラ科)に属するHydractinia sodalisにおいて,らせん状ポリプの分化,維持に宿主の存在が必要であることから,Cytaeis uchidaeの異形ポリプは,宿主巻貝からの影響(例えば分泌される物質など)により分化した大形刺胞が通常ポリプに移動することで,通常ポリプから異形化したものと考えられた. 2.機能について 刺胞動物において,防御用ポリプが特殊な刺胞を持ち位置特異的に分化することから,Cytaeis uchidaeの異形ポリプも同様に防御用の機能を有していると考察された. なお,本研究の成果の一部は公表した.
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Research Products
(2 results)