2004 Fiscal Year Annual Research Report
円錐花序をつけるハマニンニク(イネ科)の集団の遺伝的分化と繁殖様式
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16570088
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
木場 英久 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任研究員 (50221966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸口 浩彰 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (70206647)
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Keywords | ハマニンニク / イネ科 / ハマニンニク属 / 円錐花序 |
Research Abstract |
ハマニンニク(イネ科)がごくまれに出す円錐花序の生物学的意義について、この性質を獲得した歴史と適応的意義の両面から明らかにするのが本研究の目的である。 標本庫調査: 本年度は採択の時期の関係で、研究費の執行が可能になった時には花期を終わっていた。そのため、野外調査はあきらめ、国内外の標本庫に収蔵された標本を用いての分布と形態変異の調査を重点的に行ない、世界の他の地域に円錐花序が見られるかどうかを調べることにした。これにより、ハマニンニクが分布の中心である高緯度地域から南に分布を広げる間に、どのあたりで円錐花序をつけるようになったかを推定することをねらった。 国内では頌栄短期大学と高知県立牧野植物園で補足的な分布調査を行なった。国外では、北米にある6ヶ所(ブリティッシュコロンビア大学、カナダ自然史博物館、カナダ農業省、ワシントン大学、ハーバード大学、スミソニアン自然史博物館、ニューヨーク植物園)の標本庫で千点を越す標本の採集地を記録した。 その結果、国内の調査不足の地域(東北の太平洋側と新潟以南の日本海側)が明確になった。また、北米の太平洋岸と千島列島産の合計12点の標本で円錐花序が観察されたが、大西洋岸では見られなかった。円錐花序をつける性質は太平洋岸に限定されることから、なんらかの原因が太平洋岸のみに存在することが考えられる。 この標本庫調査の過程で、円錐花序をつけたハマニンニクに線虫が寄生している観察例が2例あることがわかった。線虫の寄生によって円錐花序が作られるとなると、ハマニンニクにとっての適応的意義はないかもしれない。次年度は線虫と円錐花序の関係も含めて研究する必要があることが明らかになった。 繁殖様式を調べる準備: 同一の個体(花序)由来の次世代の個体の遺伝子を相互に比較することにより、無性生殖をしていることを遺伝的に証明することができる。その準備として、10月に採集した円錐花序由来の穎果を発芽させることを試みたが、今のところ成功に至っていない。もしかすると、円錐花序由来の穎果は線虫の影響で発芽できないのかもしれないが、この点は次年度も継続的に調べていく。
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Research Products
(1 results)