2004 Fiscal Year Annual Research Report
増殖因子HB-EGFとヘパラン硫酸プロテオグリカンの機能的相互作用の解析
Project/Area Number |
16570159
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩本 亮 大阪大学, 微生物病研究所, 講師 (10213323)
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Keywords | HB-EGF / EGFR / ErbB / HSPG / 増殖抑制 / 心臓弁形成 / 細胞間情報伝達 / 細胞外マトリックス |
Research Abstract |
HB-EGFはEGFファミリーに属するヘパリン結合性の増殖因子であり、EGFRまたはErbB4と結合し細胞にシグナルを伝達する。報告者らはこれまでにKOマウスなどの解析から、HB-EGFがマウスの正常な心臓発生や表皮創傷治癒のために必須の因子であることを明らかにしている。 HB-EGFの機能的特徴の一つはヘパリン結合性を示すことである。本研究ではまずHB-EGFのヘパリン結合ドメイン(HBD)の役割を解析するために、HBD欠失変異HB-EGF(ΔHB)を作製し、野生型HB-EGFとの性状比較を行った。するとΔHBのEGFR発現細胞に対する増殖因子活性は野生型に比べて著しく高く、野生型にヘパリンが結合してその活性が昂進した場合と同等の活性を有することがわかった。このことからHBDはHB-EGFのEGFドメイン活性を構造的に負に制御しており、ヘパラン硫酸糖鎖(HS)とHBDとの結合がHBDによる負の制御を解除するということが明らかとなった。 一方、通常組織ではHSは主にコア蛋白と結合したヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)として存在している。そこで次に、細胞表面のHSPGにHB-EGFを結合させた状態でのEGFR発現細胞に対するその活性を解析したところ、遊離HS添加時とは逆に、HSPGに結合したHB-EGFの場合、活性が増殖抑制に転換することを見いだした。 さらに、HB-EGFのHSPG相互作用の生理的意義の解明を目的として、ΔHB発現ノックインマウスを作製したところ、このホモマウスはKOマウスと同様に、心臓弁形成過程で間質細胞の過増殖を誘導し、著しい心臓弁肥厚を呈することを見いだした。 これらの解析結果から、HB-EGFはHSPGと結合することで増殖促進から抑制に活性転換し、このことが生理的にも重要であることが示された。現在、この活性転換を担う分子機構についてさらに解析中である。
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Research Products
(2 results)