2005 Fiscal Year Annual Research Report
発生過程においた転写活性化因子の消失後も持続する特異的遺伝子転写の分子機構
Project/Area Number |
16570176
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
村上 柳太郎 山口大学, 理学部, 教授 (40182109)
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Keywords | ショウジョウバエ / 後腸 / T-box / byn / エピジェネティクス / サイレンシング |
Research Abstract |
ショウジョウバエの後腸は,T-box遺伝子であるbrachyenteron (byn)によって決定される.bynは初期胞胚で発現するギャップ遺伝子のひとつt11によって転写活性化されるが,bynの発現はt11が消失した後も持続し、分化が完了した幼虫や成虫でも発現していることを見い出した。bynの転写制御には,転写活性化因子や抑制因子とは別に,クロマチンレベルでのエピジェネティックな機構が関わるものと予想される.本研究の目的はbyn遺伝子の転写状態の固定化をもたらすエピジェネティックな調節メカニズムの解明であり,本年度はbynの転写制御に関わるシスエレメントと転写因子の同定を中心に解析を行い,以下の成果を得た. 1)bynの転写開始位置の5'上流の約3.7kbのゲノム断片を細分化し,lacZをレポーター遺伝子とするエンハンサー検出ベクターpWHNZ250にサブクローニングし,受精卵への直接注入および,トランスジェニック系統作製によって,後腸での発現に関わるエンハンサー活性を検出した.その結果,中期胚以降の後腸での発現に関わるシスエレメントを2箇所で同定することができた. 2)上記シスエレメントは,本来bynが発現しない前腸の一部でも発現を引き起こすことから,前腸での発現抑制に関わるシスエレメントが,3.7kbの範囲外に存在することがわかった.前腸での発現パターンはポリコームグループの突然変異の表現型と同一だった. 3)上記シスエレメントはbyn自身によって活性化されることが,bynの強制発現実験によって示された. これらの結果から,bynの後腸での発現持続にはbyn自身による自己活性化による可能性が高いことが判明した.また,後腸以外での発現抑制にはエピジェネティックなサイレンシング機構が関わることが示唆された.
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Research Products
(1 results)