2005 Fiscal Year Annual Research Report
深海生物の起源と進化:シンカイヒバリガイ類の系統解析
Project/Area Number |
16570186
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮崎 淳一 山梨大学, 教育人間科学部, 助教授 (80229830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 義弘 海洋研究開発機構, 海洋生態環境研究部, 研究員 (20344294)
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Keywords | 化学合成生物群集 / 鯨骨依存生物群集 / 熱水噴出孔 / 冷水湧出帯 / 種分化 / 分散 / 分断 / 共生細菌 |
Research Abstract |
深海の冷水湧出帯や熱水噴出孔には、化学合成細菌を細胞内に共生させて、細菌が生み出すエネルギーを利用して深海という特殊な環境下で生命を維持している化学合成生物群集が存在する。本研究では、1)化学合成生物群集を構成する主要なメンバーであるシンカイヒバリガイ類の種間並びに種内集団間の類縁関係を明らかにし、深海生物の種分化を促す要因、分散や分布拡大の能力、また環境への適応力に関する知見を得ること、2)鯨骨依存生物群集のイガイ科二貝類とシンカイヒバリガイ類の類縁関係を検討し、シンカイヒバリガイ類の起源を探ること、3)細胞内共生細菌の系統関係を明らかにし、シンカイヒバリガイ類と共生細菌の共進化の様相を解明することを目的とした。本年度行われた南太平洋ラウ海盆、西太平洋のマリアナトラフの調査によって得られたシンカイヒバリガイ類のミトコンドリア遺伝子の塩基配列を決定し、系統解析を行ったところ、いくつかの新種と思われるシンカイヒバリガイ類の存在が明らかとなった。また、南太平洋がシンカイヒバリガイ類の分布や分散の中心である可能性が、種内集団の遺伝学的な解析によって推定された。研究代表者による鳥島海山、分担者による野間岬沖の鯨骨依存生物群集の調査において得られたイガイ科二貝類とシンカイヒバリガイ類の類縁関係を解析したところ、野間岬沖の2種はシンカイヒバリガイ類に非常に近縁であり、鳥島海山のものは比較的遠縁であることがわかった。リボソームDNAの塩基配列の決定によって、これらのイガイ科二貝類はイオウ酸化を行う共生細菌をもつことが明らかとなった。また、鰓上皮細胞の電子顕微鏡観察によって、野間岬沖の1種はシンカイヒバリガイ類と同様に細胞内に、他の1種と鳥島海山の1種は細胞外に細菌を共生させていることが明らかになり、深海に適応するためのエネルギー摂取法の改良(共生系の確立)の進化的傾向が明らかとなった。
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Research Products
(1 results)