2006 Fiscal Year Annual Research Report
深海生物の起源と進化:シンカイヒバリガイ類の系統解析
Project/Area Number |
16570186
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮崎 淳一 山梨大学, 教育人間科学部, 助教授 (80229830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 義弘 海洋研究開発機構, 海洋生態環境研究部, 研究員 (20344294)
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Keywords | 化学合成生物群集 / 鯨骨依存生物群集 / 熱水噴出孔 / 冷水湧出帯 / 種分化 / 分散 / 分断 / 共生細菌 |
Research Abstract |
代表者と分担者も参加した深海、鯨遺骸調査などによって得られたシンカイヒバリガイ類およびそれに近縁なイガイ科二枚貝類のミトコンドリア遺伝子の塩基配列を決定し、系統解析を行った。その結果、鯨遺骸や枕木に生息するイガイ科二枚貝類はおおむねシンカイヒノリガイ類の外群となり、沿岸域に生息するものはさらにその外側に位置した。このことは、深海生物は沿岸域から鯨遺骸や沈木を経由して深海域に適応したとする"進化的ステツピング・ストーン説"を支持した。 沖縄トラフの熱水域と相模湾の冷水域に生息する種において、同地域の間で遺伝的な相違はみられず、シンカイヒバリガイ類の環境べの適応能力は高く、熱水と冷水という異なる環境が必ずしも種分化を促す要因とはならないことを示した。まだ、直線距離で約5,000km離れている南西太平洋と日本周辺海域に生息する種は、別種として記載されたにもかかわらず、遺伝的にほとんど異ならないことぶさらにそれらの生息域に約10,000km離れているインド洋の種も極めて遺伝的に近縁であることが明らかとなり、シンカイヒバリガイ類の分散能力は極めて高く、単純に生息地間の直線距離が大きければ種分化が促進されるわけではないことを示した。 共生細菌のrRNA遺伝子の塩基配列の決定も進んでおり、シンカイヒバリガイ類にはメタン酸化細菌だけをもつもの、主にイオウ酸化細菌をもつものがおり、シンカイヒバリガイ類と共生細菌の共進化の一端が明らかになったにまた、鯨遺骸のイガイ科二枚貝類にシンカイヒバリガイ類と同様に細胞内共生様式をとるものと、より原始的である細胞外共生様式をとるものがあり、深海への進出に伴う栄養摂取法の適応過程を類推することも可能となった。
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Research Products
(2 results)