2005 Fiscal Year Annual Research Report
スズキ類ノトセニア亜目魚類における集団動態-適応進化と中立進化の検証-
Project/Area Number |
16570187
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
大田 竜也 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助手 (30322100)
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Keywords | 分子進化 / 集団遺伝 / 極限環境 / 南極 / 適応進化 / ノトセニア |
Research Abstract |
平成17年度では、スズキ類ノトセニア亜目Dissostichus属のライギョダマシおよびマゼランアイナメで決定された塩基配列に基づき、さらにこれら2種が1450万年前に分岐した(Near 2004)と仮定して、ミトコンドリアのDループ領域における進化速度がサイトあたり3.86x10^<-9>/年であることを推定した。またこの値とGenbankなどに登録されている塩基配列データを解析し、ノトセニア亜目コオリウオ科に属する種において「有効な集団の大きさ」が0.78-2.69x10^6であることを推定した。この値は、現在のノトセニア亜目の少なくとも一部の種において有効な集団の大きさが大きいことを示している。この結果は、比較的短期間で種分化をなしてきたノトセニア亜目魚類の系統関係を明らかにするにあたり、遺伝子の系統関係から種の系統関係を推測することに注意を喚起するものであった。すなわち、同じような集団の大きさが過去に存在すれば、個々の遺伝子の分岐パターンと種の分岐パターンが異なることもありえる可能性をあげている。ただ、現在の集団の有効な大きさは必ずしも過去の集団の大きさと一致するわけではないので、過去の集団の大きさをある程度反映しているMHC遺伝子座などの解析が今後重要となる。MHC遺伝子については現在クラスIIbeta遺伝子座のゲノム解析を展開させている。さらに肝臓や脾臓のRNAを用いてcDNAライブラリーの構築も開始し、これらのライブラリーからMHCクラスI分子のスクリーニングを図っている。今年度は、比較対象種となるカサゴのサンプルを獲得し、肝臓や脾臓からRNAの抽出も行った。
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