2004 Fiscal Year Annual Research Report
ジャスモン酸およびアブシシン酸のストレスシグナル伝達と活性酸素の産生機構の解明
Project/Area Number |
16580025
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Research Institution | Hiroshima Prefectural University |
Principal Investigator |
近藤 悟 広島県立大学, 生物資源学部, 教授 (70264918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 伸博 京都大学, 国際融合創造センター, 教授 (00165151)
瀬戸 秀春 理化学研究所, 植物機能研究室, 専任研究員 (40175419)
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Keywords | 生理活性物質 / キサントキシン / アブシシン酸 / ジャスモン酸 / ポリアミン / 水分ストレス / 低温ストレス |
Research Abstract |
植物体の水分制御にアブシシン酸(ABA)は重要な役割を担っている。カンキツ果実は糖濃度の向上を目的とし、その栽培過程において水分制御が行われるが、当該処理にもABAが関わっていると考えられる。しかしながらABA合成経路の上流に位置するキサントキシン(XAN)の推移については明らかでない。ジャスモン酸(JA)はいくつかの生理活性においてABAと類似の役割を担っているため、カンキツ果実の水分制御技術にも関わりを持つと推察される。本研究では、カンキツ果実に水分ストレスを与えた際の、XAN,ABA,およびJAの推移および役割を検討した。 水分ストレス区では果実の果皮および果肉、葉内の水分濃度が減少し、処理の有効性を確認した。水分ストレス処理区では果肉においてXAN濃度が対照区に比べ上昇した。果肉中のABAもまた処理区で高くなった。XANは満開後50日以降減少する傾向を示したが、ABAは上昇もしくは高濃度を維持した。果皮および葉においてもABA濃度は処理区で上昇した。以上の結果は、ABA生合成経路における前駆物質としてのXANの直接的な関わりを示すものである。また果肉および葉においてもJAが水分ストレス区で高くなった。この結果は水分ストレスに対するJAのABAと同様な働きを示唆するものである。 低温ストレス下におけるJAおよびポリアミンの関係を検討した。熱帯果実の収穫後の貯蔵性は一般に低い。低温は貯蔵期間を延長するものの、熱帯果実は温帯果実に比べ低温に感受性が高く、10℃以下の低温は果皮の硬化、褐変などいわゆる低温障害を引き起こす。低温障害の発生機構は不明であるが、いくつかの作物でポリアミンおよびJAの関わりが示唆されている。低温障害は13℃下では観察されなかったが、7℃下では貯蔵後5日以降その発生率が徐々に増加した。しかしながら7℃下での貯蔵の前にポリアミンの一種であるスペルミンあるいはジャスモン酸の誘導体であるPDJを処理した果実では低温障害の発生が軽減された。ポリアミンとJAの関係を明らかにするため、7℃下で貯蔵する前にマンゴスティン果実をスペルミン溶液で浸漬処理し、7℃下での内生JAの推移を検討した。内生JAは13℃下では上昇が見られなかったが、7℃下では速やかに上昇した。しかしながらスペルミン処理区では、スペルミン無処理区に比較し、内生JAの値は低かった。また低温障害の発生とともに7℃下で増加した内生JA濃度は速やかに減少した。これらの結果は低温障害軽減への機構として内生JAレベルが上昇したことが推定された。しかしながらJAの働きはポリアミンによって制御されている可能性を示唆する。
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Research Products
(2 results)