2004 Fiscal Year Annual Research Report
形態形成シグナル伝達経路への異常シグナル流入が生じるkexin破壊株の解析
Project/Area Number |
16580051
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山形 洋平 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (40230338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 佑 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (20091720)
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Keywords | kexin / 麹菌 / 細胞壁合成 / cell integrity経路 / mpkA / キチン合成 / グルカン合成 |
Research Abstract |
麹菌プロセッシングプロテアーゼであるkexinをコードする遺伝子kexBの破壊株は、形態形成異常を生じる変異株である。この破壊株のトランスクリプトーム解析の結果、キチン合成酵素であるchsB、chsC、グルカン転移酵素であるgelBなどの細胞壁合成酵素群の異常発現を引き起こすことが明らかになった。また、このような形態形成の異常と細胞壁合成関連酵素の転写異常は、高浸透圧下で抑制された。このことから、麹菌のkexB破壊はシグナル伝達経路の異常を引き起こしていると考えられた。酵母cell integrity経路は、細胞外のストレスによってRho1、Pkc1を経由しMAPEカスケードを活性化し、Rlm1等の転写因子を活性化する経路として知られている。そこで、酵母cell integrity経路のMAPKであるMPK1に相当するMp1Aの発現解析を行った。その結果、麹菌mpkAは、kexB破壊により高発現していた。高浸透圧処理によってこの転写量の増加は観察されなくなった。このことから、kexB遺伝子破壊は、cell integrity経路に異常をもたらすことが明らかとなった。さらに、kexBの破壊がMpkAを恒常的活性化しているかどうかを確認するために、phospho-p44/42MAPkinase抗体を用いてMpkAのリン酸化を確かめた。その結果、kexB破壊株では、MpkAのリン酸化が生じてた。野性株では、MpkAのリン酸化は観察されなかった。以上のことから、kexB遺伝子の破壊は、cell integrityシグナル伝達経路の構成的活性化を引き起こし、これが原因となり細胞壁合成関連遺伝子の異常な転写が生じ、正常な形態形成が不可能になると考えられた。 一方、細胞壁合成関連遺伝子の異常な転写によって、細胞壁にどのような変化が生じているかを明らかにするために、kexB破壊株の細胞壁の化学構造を明らかにした。その結果、kexB破壊株は野性株と比べグルカン含量が約半分に減少し、キチン含量が約1.5倍に増加してた。このことから、kexB破壊株は、グルカンの合成量が低下し、その部分をキチンで補っているのではないかと推定された。
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Research Products
(1 results)