2005 Fiscal Year Annual Research Report
麹菌におけるハイドロフォービンの気中細胞表層局在性の解析と細胞表層工学への応用
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16580052
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Research Institution | Meiji Universituy |
Principal Investigator |
中島 春紫 明治大学, 農学部, 助教授 (10217721)
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Keywords | ハイドロフォービン / 麹菌 / Aspergillus oryzae / HypA / 細胞表層工学 |
Research Abstract |
ハイドロフォービンは空気中に菌糸または子実体を形成する糸状菌・担子菌類の細胞表層に普遍的に存在して、細胞の表層に撥水性を与える低分子量タンパク質である。ハイドロフォービンは細胞外に分泌された後、細胞表層に自己集合して外側に疎水性面が露出した両親媒性の層を形成すると考えられている。ハイドロフォービンは、特定の配置を持つ8個のCys残基が特徴的であり、一般的に糸状菌類は2-3個、担子菌類は3-6個のハイドロフォービン遺伝子を持つが、相互のアミノ酸配列相同性は低く、複数のハイドロフォービンの使い分け等に関してはほとんど分かっていない。 本研究では、麹菌Aspergillus oryzaeのゲノム情報よりハイドロフォービンをコードすると考えられる遺伝子を5つ単離したhypA-E。このうち、hypA遺伝子およびhypB遺伝子は液体培養時には発現せず、固体培養特異的に発現すること、および培地中のグルコースによって発現が抑制されることを見出した。hypA, hypB遺伝子のそれぞれについて、破壊株を作製したが、顕著な表現型の変化は見出されなかった。糸状菌である麹菌に5つものハイドロフォービン遺伝子が存在する意義は不明であるが、互いに補完する機能を有していると考えられる。さらに、hypAにコードされるハイドロフォービンHypAの局在性について検討するため、緑色蛍光タンパク質eGFPを結合した融合タンパク質HypA-eGFPを作製して、麹菌においてhypA遺伝子自身のプロモーターによって発現させた。液体培養では細胞内にGFP蛍光が検出され、Western解析により融合タンパク質が分解されていることが示唆された。しかし、固体培養では、SDS-PAGEによりHypA-eGFPよりも遥かに大きな分子量のタンパク質が検出され、HypA-eGFPの自己集合が起こっていることが示された。また、蛍光顕微鏡観察により、HypA-eGFPの蛍光が気中菌糸の分生子頭に認められ、特に分生子の表層に強い蛍光が観察された。GFPはコンパクトな分子タグだが、HypAの1.5倍の分子量を持つことから、HypAは自身よりも大きなタンパク質を付加した融合タンパク質の形でも、自己集合と気中の分生子表層への局在性を保持していることから、糸状菌を宿主とした細胞表層工学への細胞表層アンカーとしての有用性を明らかにすることができた。
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