2005 Fiscal Year Annual Research Report
脳内生理活性物質代謝異常マウスの解析と脳機能保護食品の開発
Project/Area Number |
16580106
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
柴田 克己 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (40131479)
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Keywords | アミノ酸 / トリプトファン / キノリン酸 / キヌレン酸 / ビタミン / ニコチンアミド / 脳機能保護食品 / 統合失調症 |
Research Abstract |
本研究は,「寿命の限界まで脳を正常に機能させたい」という願望,すなわち「脳機能の保護に有効な食事の提案」を目指すことである.タンパク質に約1%含まれるトリプトファン(Trp)はニコチンアミドの前駆体でもあるが,その中間代謝産物であるキノリン酸(QA)がアルツハイマー病,エイズ痴呆症やてんかんなどの様々な脳神経疾患の発症の候補物質にあげられている.一方で,Trp代謝産物の一つであるキヌレン酸(KA)はQAのアンタゴニストとして作用する.したがって,QAの生成を抑え,KAの生成を高めれば,脳を保護することが可能である.我々は,QAの生成と消去は,Aminocarboxymuconate-semialdehyde decarboxylase(ACMSD)とQPRTによって理論上支配されていることを提唱していたが,平成16年度の実験において,実際上においてもACMSD活性の変動がQA含量に影響を与えることを明らかにした.平成17年度の実験Iでは,ACMSD活性をin vivoで阻害する薬剤と腎機能を低下させる薬剤を投与することによって,QAを体内に蓄積させることで,異常行動などの身体的影響が起こるか,実験用小動物を用いて調べた.その結果,末梢組織でのQAの生成量は顕著に高まったが,脳内での蓄積は認められず,痙攣などの異常行動や身体的影響は見られなかった.実験IIでは,トリプトファンと後半の代謝経路が同じであるアミノ酸のリシンの大量投与が,脳内セロトニン,カテコールアミン量への影響を調べたが,いずれの化合物においてもリシン投与の影響は認められなかった.これらの結果は,若年の実験用小動物では,末梢組織でQAの異常産生が起きても,脳内には蓄積しない防御機構が存在していることが示唆された.今後は,老齢実験用小動物を利用した研究が必要である.
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