Research Abstract |
プロリンを含有する生理活性ペプチドはオピオイドアゴニストペプチド,オピオイドアンタゴニストペプチド,免疫賦活ペプチドなど自律調節機能をはじめ,さまざまな機能を有することが示唆されている。しかし,その栄養価値については重要性が求められているのもかかわらず,現在においてもその解明に至っていない。この一端を明らかにするために強いコレステロール低下作用をもつと考えられる大豆グリシニンから派生するLeu-Pro-Tyr-Pro-Argに着目し,Aspergillus oryzae由来の酵素を用いた合成法を確立し,このペプチドの吸収機構の解明を目的に以下の結果を得た。 (1)Leu-Pro-Tyr-Pro-Argの吸収実験には体重200g前後のWister系雄ラットを用いた。吸収実験の前日に絶食させ,Leu-Pro-Tyr-Pro-ArgをPBSに溶解させ,胃内に投与した後,一定時間、門脈から血液を採取し,ゲルろ過(SMART System)にて分析を行った。その結果,Leu-Pro-Tyr-Pro-Argの吸収は投与後,血清中に存在することが示唆された。 (2)Leu-Pro-Tyr-Pro-Arg結合タンパク質の探索を目的として,Wister系雄ラット(体重200g前後)より小腸粘膜を採取した後に破砕し,ショ糖密度勾配遠心法にて試料を調整した。また,EIACOREを用いるにあたって,Leu-Pro-Tyr-Pro-Argの最適固定化を求めるために各濃度のペプチド及び各pHのバッファーについて検索し,分析した。その結果,結合タンパク質の存在が示唆された。 (3)Caco-2細胞にビオチン化Leu-Pro-Tyr-Pro-Argを添加し,蛍光顕微鏡にて観察を行った。細胞内で,若干ながらFITCによる蛍光が観察され,特に細胞膜周辺でFITCの蛍光が顕著であったことから,細胞膜を介し,細胞内にLeu-Pro-Tyr-Pro-Argが取り込まれたものと推察された。この結果からLeu-Pro-Tyr-Pro-ArgはCaco-2細胞に取り込まれたと推察された。 (4)Leu-Pro-Tyr-Pro-Argのコレステロール低下作用にについてSprague-Dawley系ラットを用い,基本飼料にAIN-93G組成に準拠し,ショ糖を糖質源としてコレステロール0.5%,コール酸ナトリウム0.25%を含む高コレステロール食を用い,Leu-Pro-Tyr-Pro-Argのコレステロール低下作用について検討したが,有意な作用が認められなかった。 以上のことからLeu-Pro-Tyr-Pro-Argのコレステロール低下作用について確認されなかったが,細胞レベル,個体レベルの解析によってLeu-Pro-Tyr-Pro-Argは吸収されることが示唆された。また,Leu-Pro-Tyr-Pro-Argはタイトジャンクション経由で取り込まれる可能性が高いことが示唆されたことから、その吸収機構を詳細に解析することによって,プロリン含有ペプチドの吸収をさらに解明することができると考えられる。
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