2005 Fiscal Year Annual Research Report
水ストレスが樹幹木部の通水機能と葉の蒸散抑制に与える影響についての研究
Project/Area Number |
16580122
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉川 賢 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (50166922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 圭児 岡山大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (90205766)
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Keywords | 通水性 / 蒸散速度 / 臭柏 / 異型葉性 / 比葉面積 |
Research Abstract |
水ストレスを調整して生育させる室内実験と、中国内蒙古毛烏素沙地での調査測定で、臭柏(Sabina vulgaris)の木部の通水性と蒸散活動に対する水ストレスの影響を調べた。 室内実験の結果、固定砂丘上の水分条件に匹敵する比較的弱い乾燥ストレスを受ける環境に生育した臭柏は、夏期の蒸散速度を制限するとともに、水ポテンシャルを低く維持する水分生理的な反応により、失水、吸水の面で乾燥ストレスに順応した。このことによって、乾燥ストレスを受けない場合と同程度の個体サイズを実現できた。 一方、半固定砂丘上に匹敵するような極度の乾燥ストレスを受ける環境に生育した臭柏は、蒸散速度、水ポテンシャルとも乾燥条件に順応できる限度を超えており、乾燥ストレスを受けない場合と同程度の個体サイズを維持することはできなかった。 臭柏は発育段階により針葉と鱗片葉を持つ異型葉性を示す。臭柏稚樹の異型葉性と資源配分特性の関係を調べた。地際直径と相対照度には正の相関が見られ、明るい環境ほど個体が大きかった。一方、全葉重に占める鱗片葉重の割合(鱗片葉率)は、相対照度との間で相関が見られなかったが、地際直径、個体重など個体サイズと正の相関が見られた。また、T/R比は小個体で大きく、定着初期の根への資源配分量が大きかった。個体重あたりの葉重は個体重で変化しないが、個体重あたりの葉面積は小個体で大きく、実生が定着する低照度環境での耐陰性を高めると考えられた。この個体重当たりの葉面積の増加は、大きな比葉面積を持つ針葉の割合を高めることで調節されていた。高照度環境で生育する大きな稚樹は耐乾性の高い鱗片葉の割合が多かった。つまり、臭柏稚樹は針葉と鱗片葉の割合を生育段階で変化させることで、定着初期に必要な耐陰性と後期に必要な耐乾性を獲得し、半乾燥地の厳しい環境下での更新が可能になると考えられた。
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Research Products
(1 results)