2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16580142
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遠藤 宜成 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (00213603)
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Keywords | ツノナシオキアミ / 食物要求量 / 無殻繊毛虫 / 微生物連鎖 / 生食食物連鎖 |
Research Abstract |
殻を持たないため胃内容物として認められていなかったが、現存量が多い無殻繊毛虫をツノナシオキアミEuphausia pacificaが摂食するかどうかを検討した。その結果E.pacificaは無殻繊毛虫Strombidium conicumを積極的に摂食する事がわかった。摂食速度の最大値は一日あたりE.pacificaの体炭素の最大2.3%に相当しており、従来報告されていた本種のエネルギー要求量から考えて、繊毛虫だけでE.pacificaの食物要求を満たすことができる。E.pacificaはバクテリアのような小さな生物を食べることはできないが、繊毛虫を摂食することができることから、この結果は間接的ではあるが、本種が微生物連鎖と生食食物連鎖を結ぶ役割を果たしていることを示唆するものである。 上記のようにE.pacificaは繊毛虫を摂食すること、また以前に報告者らが行った胃内容物調査から、本種は従来考えられていたように植食性ではなく、肉食性が強いことが示唆されたが、これを検証するために窒素安定同位体比を測定した。その結果、E.pacificaのδ^<15>Nはネット動物プランクトンのδ^<15>Nよりも少し高いだけであり、POM(粒状有機物)のδ^<15>Nより2‰程度高いことから、ネット動物プランクトンよりもPOMの方がE.pacificaにとっての餌として重要であることが分かった。また、E.pacificaのδ^<15>Nがネット動物プラングトンのδ^<15>Nよりも常に高い値を示したことから、E.pacificaはネット動物プランクトンよりも高い食段階に位置していることが示唆された。 結論としてはE.pacificaはこれまで報告されていたように植食性ではなく、雑食性であり、時々カイアシ類のような中型動物プランクトンを食べているものと考えられる。このことはE.pacificaが優占する北部北太平洋の食物連鎖を考える上で重要である。
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Research Products
(1 results)