Research Abstract |
平成17年度はこれまで実施してきた生分解性漁網繊維の深層水浸漬試験において,深層水中からプラスチック分解微生物の単離を試みた。深層水浸漬試験はこれまで同様,富山県水産試験場の深層水汲み上げ施設内にある飼育水槽(水温0.5℃)と加圧タンク(水温2.5℃,水圧約20atm)内で行った。深層水浸漬試験には,脂肪族ポリエステル系の繊維3種類(PCL, PHB/V, PBS)と天然繊維1種類(絹糸)の計4種類を用い,浸漬期間は1年間とし,1,3,6,9,12ヶ月ごとにサンプリングを行い,試料の力学的特性(強度,伸度)の変化と試料表面の顕微鏡観察を行った。さらに,PCLについて試験水(深層水中)から平板培地培養法により分解微生物のスクリーニングと単離を行った。単離したPCL分解微生物についてDNA抽出を行い,その遺伝学的解析を行った。 試験水の中で分解の最も速かった加圧タンク水を100倍濃縮し,PCLグラニュール寒天平板培地(塗沫法)により分解微生物のスクリーニングを行った。PCLを炭素源とした培地からクリアーゾーンが形成された低温(4℃及び10℃)の分解微生物2株(白色のコロニーと乳白色のコロニー)と,表層水から10℃でクリアーゾーンが形成された分解微生物1株(乳白色のコロニー)についてDNAを抽出し,PCR-DGGE(変性濃度勾配ゲル電気泳動)法により3株の純化を確認した。DGGEバンドより,3株がそれぞれ異なる分解菌であることが推測された。さらに,これらの3株のうち加圧タンク水から単離された2株(それぞれ,Toyama04とToyama10と命名)について遺伝子解析を行った。2株の分解微生物について,遺伝子解析による菌の同定を行った結果,どちらもPseudomonas sp.と高い相同性を示した。また,顕微鏡観察の結果,これらの菌はともに桿菌であることがわかった。
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