2004 Fiscal Year Annual Research Report
スズキ型魚類の生活史初期における代謝変動と共食い行動の連関
Project/Area Number |
16580152
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
及川 信 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (10175234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 誠一 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (60038297)
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Keywords | 共食い / 酸素消費量 / 仔魚 / 稚魚 / 変態 / 代謝スケーリング / 偽鰓 / 視覚 |
Research Abstract |
【目的】マサバは成育過程で激しく共食いを行い、生活史初期における減耗が激しいことが知られている。これに関し,トラフグ仔稚魚においては、共食い行動と代謝変動・呼吸器官発達が密接な関わりを持つと示唆されている。そこで、本研究ではマサバ生活史初期の体重増大に伴う酸素消費量の変化を調べ、同時に行動観察と鰓構造の観察を行った。 【方法】酸素消費量:孵化後1日齢(体重0.0003g)から31日齢(0.78g)までのマサバ3908個体について測定を行った。酸素消費量は仔稚魚を眼科鋏で細切し、ピルビン酸塩等を添加した生理食塩水に細切片を浮遊させて、TAIYOのO_2アップテスターで22℃で測定した。共食い行動:共食い行動開始時期に注意して観察するとともに、孵化後より連続的にサンプリングを行った。鰓の初期発生:孵化後5日齢(体重0.0004g)から26日齢(体重0.13g)までのマサバ32個体の観察を行った。 【結果および考察】酸素消費量:Feldman & McMahon(1983)の回帰モデルを用いて、単位体重当り酸素消費量M/W(μ1/g/min)と体重W(g)の間のアロメトリー関係M/W=aW^<b-1>は発育段階に応じて3つに区分された。0.0003-0.003gではM/W=1.76W^<-0.202>、0.003-0.08gではM/W=2.66W^<-0.202>、0.08-0.8gではM/W=3.15W^<-0.202>であった。すなわち"b-1"の値が一定のまま、体重0.003gと0.08g付近でM/Wは急上昇した。共食い行動:体重が0.002g程度に成長すると他個体を攻撃し始め、0.005gの魚では胃の中に共食いした個体が確認された。鰓構造:偽鰓に動脈血を供給する第一鰓弓に二次鰓弁が生じたのは、後側鰓弁列の鰓弁で0.001g、前側鰓弁列の鰓弁で0.002gの個体であった。他個体への攻撃行動を開始したのは0.002g程度に達してからであり、攻撃行動の発現は0.003g付近におけるM/Wの急上昇と関連があると考えられる。偽鰓を通過した血液は眼の脈絡膜を養うので第一鰓弓の鰓が完成した0.002g程度の個体は視覚機能が完成して攻撃行動を開始したと考えられる。
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