2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16580179
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
草苅 仁 神戸大学, 農学部, 助教授 (40312863)
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Keywords | 農業 / 食料政策 / 食料自給率 / 食料の安全性 / 食料安全保障 / 自由貿易 / 私的財 / 公共財 |
Research Abstract |
日本の消費者は安全性などの観点から食料自給率の向上に対する志向を根強く有しているものの、自らが割高な国産農産物を購入して自給率を向上させるためのコストを負担することには消極的である。また、貿易立国の日本では自由貿易が最大の社会的余剰をもたらすという「自由貿易の優越性」を信奉する議論が多数派を占め、農業が比較劣位にあることから食料輸入大国である現状が正当化されている。 「食料輸入大国の日本がこれからどのような方向で農業および食料政策を実施していくべきか」ということを考える上で、少数派である食料自給率向上論には経済理論の次元で正当性を主張する余地があるのかどうか、(1)自給率向上論の理論的正当性を探り、(2)その場合の政策効果を計量的に把握することが本研究の課題である。 研究初年度にあたる平成16年度は、文献資料の収集・整理と関連研究分野のレビューを中心に、研究計画に沿って以下の作業を実施した。 1.「自由貿易の優越性」が完全競争市場を前提として成立していることに対して、食料の安全性や量的危機管理としての食料安全保障などは市場の失敗をもたらす公共財である。文献資料の収集・整理を通じて、農業および食料政策について、日本の方向性を検討するための枠組みが私的財と公共財の配分問題にあることを確認した。 2.関連研究分野のレビューを実施した結果、同様の私的財と公共財の配分問題が「食の外部化」に代表される家計の行動に観察されることを確認した。「食の外部化」は、雇用労働時間の増加を通じて家計所得を増加させ、それが私的財購入の制約を緩和したが、同時に家族の団らんなど家計内の公共財供給を減少させた。 3.上記1、2をふまえて、本研究の目的に適合するモデルの構築について見通しを立てた。この点で、最近の家計モデルの展開で有用性が指摘されている限界需要関数の応用が、本研究の枠組みにおいても有効であると結論づけられる。
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