2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16580179
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
草苅 仁 神戸大学, 農学部, 助教授 (40312863)
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Keywords | 食料 / 食料自給率 / 自由貿易 / 製作 / シミュレーション |
Research Abstract |
日本の消費者は安全性などの観点から食料自給率の向上に対する志向を根強く有しているものの、自らが割高な国産農産物を購入して自給率を向上させるためのコストを負担することには消極的である。また、貿易立国の日本では自由貿易が最大の社会的余剰をもたらすという「自由貿易の優越性」を信奉する議論が多数派を占め、農業が比較劣位にあることから食料輸入大国である現状が正当化されている。「食料輸入大国の日本がこれからどのような方向で農業および食料政策を実施していくべきか」ということを考える上で、最終年度である平成18年度は、以下の観点から研究成果をとりまとめた。 1.これまでのレビューから、家計モデルで扱われる公共財の導入手法に有効性が見出せるという結論を得た。特に1970年代後半以降に日本の食料自給率を引き下げた要因として食事の外部依存性が高まったことや、食事が簡便化したことがあげられるが、これらは家計内公共財である調理技術の低下と関係していると考えられる。家計における調理技術の低下は食の外部化を促進し、食料自給率を低下させる方向に寄与したことを明らかにした。 2.その一方、特に1980年代後半から顕在化したといわれる健康ブームは国産食料に対する消費者の志向を高め、これが食料自給率の低下を押しとどめる方向に作用したとする定性的見解がある。この点について、マクロ的な視点から国産食料と輸入食料を含む需要体系分析を実施し、消費者の国産志向を計量的に捉えた。 3.供給サイドから食料自給率に関わる政策効果を考察するため、政策シミュレーションを念頭に、日本にとって最大の食料供給国である米国の国内農業政策(価格・所得支持制度)が日本の輸入価格に与える影響を計量的に捉えた。「自由貿易の優越性」の前提を排して、寡占的な卸売市揚による戦略的な貿易の効果を検討した。
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Research Products
(1 results)