2005 Fiscal Year Annual Research Report
政策評価マトリックス(PEM)分析によるFTAの影響評価に関する計量経済学的研究
Project/Area Number |
16580190
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Research Institution | Wako University |
Principal Investigator |
小林 弘明 和光大学, 経済経営学部・経済学科, 教授 (70329019)
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Keywords | 政索評価分析(PEM) / WTO農業交渉 / 自由貿易協定(FTA) / コメ経済 / 多面的機能 / 費用便益 / EUの砂糖政策 / 食肉経済 |
Research Abstract |
WTOおよびFTA交渉という多国間・二国間関係の中で、日本農業が直面する問題点を的確に捉え、将来方向を示唆するための分析的な枠組みと計量経済学的手法を用いた分析事例を『WTO、FTAと日本農業-政策評価分析による接近-』(青山社、2005年12月刊、平成17年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)175276)にとりまとめて出版した。このうち地域貿易協定が重要な位置を占めるEUの砂糖政策に関する論考の要約は、2005年度日本農業経済学会において報告し、同学会『論文集』にも掲載した。研究内容は以下のとおりである。 第1には、近年のわが国農政の展開を、国際比較が可能な農業保護指標により概観し、国内対策としての市場価格支持と各種直接支払の評価に関して、おもに方法論的な検討を行った。 第2には、PEMの分析手法を日本のコメ部門に適用した前年度の研究をさらに応用し、日本のコメ市場の大幅な自由化と制度的な変更も前提とした場合を想定したシミュレーションを行った。ここでは、すでに2008年から運用方法の変更が決定されている米生産調整政策が、自由参加形式に変更されることを想定した場合の均衡作付面積の推定を行い、さらに二次税率引き下げによる影響分析を行った。コメの関税相当量に関しても詳細に検討した。 第3には、わが国食肉部門を対象とした政策評価モデルを構築することであるが、ここでは、主に関税水準と牛肉部門における子牛価格安定化対策の効果を評価するモデルビルディングを提示した。 第4には、補助金付きの輸出を含むEUの砂糖政策をとりあげ、WTO農業交渉における3分野を切り離して評価するこれまでの取り扱いが、実は見直される方向性もあり得るという点を示唆する理論的な考察を行った。わが国のAMS通告とその周辺事情にかかわった訴えが提起される可能性は今のところ低いと思われるが、本事例は一定の示唆を与えるものかもしれない。 第5には、食料およびコメに関する国際的な情勢分析を第5の課題として設定した。この課題は、第1〜第4の課題にかかわる背景となる議論であり、本刊行物にとっては補論的な位置を占める。
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Research Products
(2 results)