2005 Fiscal Year Annual Research Report
北米自由貿易協定とカナダの農業経営・食品産業-果実とワインを中心に-
Project/Area Number |
16580191
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松原 豊彦 立命館大学, 経済学部, 教授 (50165859)
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Keywords | 北米自由貿易協定 / カナダ / 果実 / ブルーベリー / ワイン / 農業 / 食品産業 / 比較劣位 |
Research Abstract |
北米自由貿易協定(NAFTA)のもとでのカナダの農業経営とアグリビジネス(食品産業)の構造変化について研究を行った。比較劣位部門である果実とワインを取り上げて、両部門における市場構造、経営構造の変化、およびカナダの農業・食料政策との関連を検討した。そこで明らかになったことは次のとおりである。 第一に、1989年以降果実部門においてはリンゴ・ナシなど果樹栽培面積の後退が確認できるとともに、ブルーベリー、ラズベリー、ブドウなどの液果類の栽培面積が拡大してきた。とくに生産拡大がめざましいのはブルーベリーであり、カナダは世界有数のブルーベリー輸出国となっている。比較劣位といわれる果実部門の中でも、生産・輸出を増やした作物と減らした作物の明暗がはっきり分かれている。果実の主産地であるオンタリオ州南部ではリンゴなどの果樹を伐採して液果類に転換するか、あるいは伐採跡地にトマトやキュウリの温室を作るという動きが目立っている。 第二に、ブドウを原料とするワイン部門では、市場全体が拡大する中で輸入が大きく増えた。国内のワイン生産は1990年代前半に一時減少したが、その後回復基調にある。その要因としては、(1)品種更新の成功、(2)品質保証制度(VQA)の導入、(3)ワイナリーの増加、(4)アイスワインというカナダが生産条件の優位性をもつ特殊なワインの生産、といったことを指摘できる。ワインの品質保証制度は、州ごとに作られた認証機関がワインの品質検査と認証を行うもので、これに合格したワインにはVQAのラベルを貼ることができる。カナダのワイン生産構造は、低価格の大衆品と高価格のブランド品とに大きく二分されており、この間の方向は高価格のブランド品を作る一部のワイナリーがVQAなどの制度を活用しながら生き残りを計ってきたとまとめることができよう。
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Research Products
(1 results)